映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「赤頭巾ちゃん気をつけて」 岡田裕介&森和代

2024-05-19 20:21:07 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「赤頭巾ちゃん気をつけて」を名画座で観てきました。


映画「赤頭巾ちゃん気をつけて」は,1970年の東宝映画。芥川賞受賞作品で庄司薫の160万部を超える大ベストセラーの映画化である。監督は森谷司郎だ。当時、小学生だった自分はまだ学生運動にもベストセラーにもご縁がなかった。この小説を読むのは高校生になってからである。

戦前の東京府立一中時代からの流れで都立日比谷高校は, 1968年に灘高校に1名抜かれるまで戦後東大合格者高校別進学数で常にトップだった。首位奪還を明言こそしないまでも狙っていたであろう。

都立高校に学校群制度が導入され、日比谷高校が11群3校のうち1校にすぎなくなった。日比谷高校は,1969年に学校群前の最後の生徒が卒業する。しかも同じ年の東大紛争の後、東大入試中止が判明する。その直後の日比谷高校の3年生庄司薫の心の動きを示す物語である。作家の庄司薫はペンネーム日比谷高校のOBでずっと前に卒業している。主演は自ら日比谷高校出身者でもある後の東映社長岡田裕介である。

映画は東京タワー近くの上空から俯瞰する映像で始まる。現在の高層ビルが立ち並ぶ港区付近の光景とは全く異なる。唯一高いビルが霞ヶ関ビルであり,ホテルニューオータニである。その一角に日比谷高校は位置する。上空から日比谷高校を映し出す映像からこの映画はスタートする。

1969年2月東京の住宅地に住む日比谷高校3年生である庄司薫(岡田裕介)は、由美(森和代)と幼馴染で意識し合う間柄だったが、最近つれない。安田講堂に立てこもった学生たちが検挙された後で、東大は1969年度の入試を中止する。近所のおばさん(山岡久乃)からは、京都に行くの?一橋を受けるの?としつこく聞かれる。大学進学自体をやめようと考える薫がそういうと、やっぱ東大を目指すのねと言われて当惑する。

まさに昭和テイストの強い青春ものである。
名画座での昔の東京を題材にした特集の一本である。1970年は大阪万博の年であると同時に70年安保の年でもある。街にはゲバ棒を持った学生たちもまだいる。「赤頭巾ちゃん気をつけて」東大入試中止を題材にした当時としてはアップデートな話題を小説にして大ベストセラーになった。映像では手持ちカメラで粗く街行く人を映す場面も多い。今だったら肖像権で大騒ぎしそうだ。どんくさいしラフな印象だが悪くはない。


⒈昭和40年代半ばの光景
大谷石塀で囲まれた主人公薫の家は、閑静な住宅街の一角にある。広い庭があり。貫禄ある母親は着物を着ていて、自宅には若いお手伝いさんがいる。昭和40年代半ばまではこの手の家はよくあった。外にはブルーバードが止まっている。同じ車が自宅にあったので懐かしい。

ピンキーとキラーズの世紀のヒット曲「恋の季節」は1968年の大ヒット曲だ。歌謡映画のように本物の今陽子が出てくる。ゴーゴーガールが後ろで踊っている。男女が上半身裸になって踊りまくるが、こんな店あったのだろうか?

⒉意味不明な学生たちの言葉
日比谷高校の中にはカメラはさすがに入らない。赤坂見附の駅から急な坂を登る通学路の途中で、高校内の急進派と出会う場面がある。小説家志望だった友人が薫の家に遊びにきてだべるが、まったく意味不明なセリフを延々と話す。高校生にしても、大学生にしても学生運動にハマっている連中にろくなやつはいない

それこそ,日比谷高校の大先輩にあたる日本の知性加藤周一がこんなことを言っていた。
「左翼政治理論といったものは,耳慣れぬ抽象的な言葉がたくさん出てきて,どこがどこへ続くのかわからない。」
「そういう論文を書いた筆者である学生の知的能力の限界です。社会科学のもっともらしい言葉が、無数にくり出されてきて,それぞれの言葉の定義が明らかでなく,整理もつかず,辻褄も合わず,何を言っているのか、誰にもわからないと言うのは,筆者の頭の混乱を示していている。」
(加藤周一 読書術 p186)
まったくその通りだ。

⒊森和代のショートカット
この映画を観て儲けものだと思ったのが、幼なじみ由美役森和代の美貌である。早い段階で、芸能界から足を洗っているので,現在全く情報がない。ベリーショートに近いショートカットが似合う。ミニスカートに身を包むそのスタイルは抜群でテニスウェアも素敵だ。調べたら、何と森本レオと結婚しているらしい。ちょっと驚く。もったないないなあ。


⒋色っぽい医師の戯れ
こうやって、1970年のこの映画を見ていると,割とヌードシーンが目立つ。主人公が足の指を怪我して病院に行く。そこには薫の兄貴が昔付き合っていた女医がいる。その女医は白衣の下が裸のままだった。そこで思わず薫は妄想してしまう。その妄想シーンでバッチリ女医の森秋子のヌードが拝める。

ボリューミーではないがそそるヌードだ。最近の映画を見るとバストトップを隠す女優が多い。むかつく。むしろこのくらいの時代の方が気前が良かったのかもしれない。なかなか色っぽくていい女だ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする