映画とライフデザイン

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映画「ありふれた教室」 レオニー・ベネシュ

2024-05-23 19:54:02 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「ありふれた教室」を映画館で観てきました。


映画「ありふれた教室」はドイツのある初等教育7年生(12歳)の教室の話である。ここのところ邦画ばかり見ていたが,まともだと思われるドイツ映画を選択する。トルコ系ドイツ人イルケル・チャタク監督の作品。ドイツ映画界では各種賞を受賞している作品だ。大学でフランス語選択だったので,ドイツ語には馴染みが薄い。解説には中学校1年となっているが、ドイツと日本では教育体系も異なり映画内どおり7年生と呼ぶ。

予告編では暗そうな雰囲気であったが,観てみると最初から最後まで目が離せない展開であった。

熱心で、正義感の強い若手女性教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)は,新たに赴任した学校で7年生のクラスを受け持つ。構内では盗難事件が頻繁に起きていた。その犯人として教え子が疑われる。校長らの強引なクラス内調査に反発したカーラが職員室に隠し撮りを仕掛けると、動画にはある人物が着ている洋服が映っていた。

服を着た当人を問い詰めると否定する。解決に校長を巻き込むと校内の関係がおかしくなる。校長を含めた対応は生徒にまで噂となって広まり,学校中を巻き込む騒動となる。


まぎれもない傑作である。
話の内容から,好きかどうかと聞かれると微妙だが、映画としてはすばらしいリズミカルなテンポと主演女優及びクラス内の生徒の掛け合いがリアルで実際の学校にいるような感覚を持つ。良い映画に出会ったと思う。

⒈リズミカルな展開
取り上げる逸話が多い。簡潔に一つ一つのシーンを要点がわかるように映し出してテンポよく次のシーンに移っていく。小さな山をリズミカルにつなぐ。緊張感が最後まで途切れない。長い上映時間になりつつある最近の日本映画では時間を費やすだけの無駄な長回しが多い。そんな日本映画を見慣れてきたので,逆にすばらしいと感じる。

⒉強い女
主人公は日本の小学校のように7年生に対して何でも教える数学も体育も教える情熱的な担任の教師だ。テキパキしているし正義感も強い。苗字がノヴァクと言うので,「めまい」の名女優キムノヴァクを思い出す。ポーランド出身の設定だ。でも、自分が生徒だったら最も怖い教師と思うタイプだ。授業中怠けづらいタイプだ。カンニングも見破る。体育の授業中外に退避した連中を強引に連れ戻す。ライターを持っている女生徒も見つける。

女教師が主人公になる映画やTV番組はあれど,この女性主人公カーラほどみんな強くはないすぐ泣いてしまう。絶対こんな形になったら,日本映画だったら泣くなと思っても、絶対に泣かない。女々しくない。本当に強い女だ。ただ、今回は泥沼に落ち込む。保護者会で問い詰められ、過呼吸症になってトイレのゴミ箱にあるビニール袋で息を吸う場面が見どころの一つだ。


⒊担当クラスの生徒をかばう主人公
実は、隠し撮りで引っかかる女性は学校の同僚教師で、担任クラスの生徒の母親でもあった。あり得なさそうなすごい状況だ。動画にはっきり映っていても否定されて、成績優秀な息子との関係も悪くなる。こんな事件があって母親は学校に来れなくなるが、息子は懸命に母親をかばう。主人公の立場は微妙だ。そんな時、教え子である息子が突然暴走するのだ。


暴走は危険領域を越える。でもそんな生徒を主人公カーラはかばう。微妙な瞬間が続く。そしてエンディングに向けて、伏線の回収でもあるルービックキューブがポイントになる。精一杯のラストへの持っていき方は悪くない。
コメント
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