映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」

2024-05-27 18:35:39 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」を映画館で観てきました。


映画「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」は1972年11月革マル派の集団から中核派のスパイという疑いを持たれてリンチの末亡くなった早稲田大学2年生川口大三郎さんの話を中心に学内での内ゲバを描くドキュメンタリーである。監督は代島治彦だ。リンチの再現映像も組み込まれている。立花隆が綿密に調べて書いた「中核と革マル」を読んで、当時の大学構内での内ゲバの酷さは知っていた。自分は学生運動の連中は人間のクズと思っているクチで、大嫌いなやつらだが、怖いもの見たさで映画館に向かう。

早稲田大学第一文学部校舎の学内で、革マル派の闘士に囲まれた早稲田一文2年生川口大三郎さんがリンチを受ける再現映像からスタートする。当時、早稲田大学の自治会は革マル派によって牛耳られていた。川口さんは中核派からスパイで侵入している疑いをもたれて、オマエの同志は誰だと拷問を受けている。次々にゲバ棒で叩かれる。リンチは延々と続き、そろそろ終えようとした時に、川口さんがグッタリする。あわてて蘇生措置をしてもむずかしい。唖然とする革マル派の闘士を映し出す。


再現映像の後は、当時の学生集会などの映像が実際に残されていて、それをドキュメンタリータッチに編集する。「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」を書いた樋田毅をはじめとした当時の闘士たちの証言だけでなく、池上彰や佐藤優などもコメントを寄せる。この当時、それぞれの派同士の内ゲバで、100人以上が亡くなった。悲惨である。当時学生運動にうつつを抜かしたのは本当にクズな連中だ。

思ったよりもリアルで興味深い映画だった。
1960年代から1970年代の学生運動の歴史も日本現代史の暗部として語り継ぐべきものだとおもう。この映画を観ても、何てクズな奴らだと思うけど、みんな狂っていたのだ。川本三郎「マイバックページ」のように、現代の俳優が演じて当時の出来事を映すのもいいが、この映画には早稲田大学内での学生集会を映す8ミリ映像が多い。よくぞ残していたものだ。長髪の学生たちの風貌が、いかにも70年代前半だ。川口さん死亡事故のあと革マル派のトップ田中敏夫が吊し上げをくらう映像もある。そのため、リアル感が強くなる。


文学部にできた新しい自治会のトップである原作を書いた樋田毅が、革命であれば暴力も肯定する革マル派に対抗して非暴力思想で一般学生を集めた。樋田の立場が映画の基調になる。ただ、非武装の考え方自体が気にくわないと思うかつての闘士である論客もいるようだ。

映画内でインタビューを受ける当時の闘士は比較的現代のリベラルと言われる人たちだ。著者の樋田毅朝日新聞で長年幹部だったし、岡本厚「世界」の編集長の後岩波書店の社長になる。革マル側で親友を襲撃で亡くした石田英敬はフーコーを扱う元東大教授だ。

その他の元闘士も含めてインタビューされている部屋は大量の書物に囲まれたそれなりのレベルの生活をしていると思しき印象を受ける。それぞれの顔に鋭角的雰囲気を感じない。穏やかな印象だ。まさに「リベラル」という名で現在も金儲けしている人種だ。ピケティ的な言い方をすると「バラモン左翼」と言っても良いだろう。そんな嫌味な部分は強くても、当時を回想するみんなの言い分が興味深い。


たった5~7年くらいしか自分の歳と変わらないのに、70年代後半に入学した自分の大学にはほとんど学生運動系の立て看板はなかった。教室の中に飛び込んでくる変な左翼学生を数回見たが,ほとんどいない。早稲田では見たことはある。でも、学生運動に毒された早稲田に進学した高校の同期はいない。

一体70年代前半の異常な学生は何だったのだろう。ところが,自分と同じ時期に大学に通った佐藤優や百田尚樹のような同志社の同窓生の文章を読むと,学内に左翼学生が大勢いたようだ。ずいぶんと東西とで違ってたものだ。京都にはやっぱり左翼が多いのかなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする