映画とライフデザイン

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映画「少女は卒業しない」河合優実&小野莉奈

2023-02-26 17:38:05 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「少女は卒業しない」を映画館で観てきました。


映画「少女は卒業しない」は朝井リョウの原作を映画化した作品。頻繁に映画に出演している河合優実を含めた4人の女子高校生が卒業式まであと2日になった日々を描く偶像劇である。往年の山口百恵を思わせる趣きをもつ河合優実には、同世代と違う大人びた色気を感じる。「アルプススタンドのはしの方」野球オンチの女子高生を演じた小野莉奈もここで登場する。いずれも2000年生まれだ。若き日に思いっきり目線を下げる決意で映画館に向かう。

校舎の解体が決まっている山梨にある高校で、4人の女子高校生が卒業式を迎える。それぞれに悩みを持っている。4人は卒業式を迎えることでは一緒でも、クロスしていない独立した関係である。

山城まなみ(河合優実)は料理部に所属して、卒業後は地元の栄養の専門学校に行くことが決まっている。付き合っている彼氏に弁当をつくってあげていた。卒業式で答辞を読むことが決まって、本文の推敲を重ねて臨む。いざ本番になるときにある出来事を思い出し、胸に込み上げてくるものがある。


後藤由貴(小野莉奈)はバスケットボール部に所属している。卒業後は東京で心理学を勉強しようと進学を決めた。男子バスケ部に付き合っている彼氏がいるが、地元進学予定と進路が別々となり、数ヶ月疎遠になっていた。これではマズイと卒業式に一緒に登校しようと誘いかけるのであるが。。。


作田詩織(中井友望)は引っ込み思案で、クラスでみんなの会話に入れないまま図書館にいることが多かった。図書室担当の教員にクラスメイトと馴染めない話をすると、卒業式前に話しかけてみたらと言われる。思い切って実行してみると、感触が今イチであり、先生にグチってしまうのであるが。。。


神田杏子(小宮山莉奈)は軽音楽部の部長である。卒業式の記念ライブに出る部内の3つのバンドの人気投票をすると、森崎率いるパンクバンドが圧倒的人気だった。結局、杏子は投票通り森崎バンドにトリを任せることにしたが、投票結果はヤラセだと反感する部員が出てきた。そして、当日を迎えようとしたとき突然バンドの楽器やメイク道具が行方不明になるのであるが。。。


これらの4つの話が並行して時系列通りに進んでいく。「え!どうなっちゃうんだろう?」と思わせるのはバンドの話くらいで、あとはごく普通に話が進む。田舎町の普通の高校にビックリするような話は起きない。卒業式を題材にしたこの映画を観ながら、すっかり忘れていた自分の学生時代のエピソードが次々とよみがえる。そんなこともあったなと振り返るには良いきっかけになる映画だった。

⒈山梨の県立高校
いかにも山梨らしい盆地にある高校だ。見渡す風景は田舎町の風景である。全員が大学に進むわけではない。進学校ではない。地元の大学に進学する者もいれば、東京に進学することでウキウキしている者もいる。専門学校に進む生徒も就職する者もいる。ある意味バラバラだ。でも卒業式まであと何日と黒板に書いてあるけど、その時期って高校には行っていなかった気がする。

ただ、こんなふうに進路がバラバラな方が、物語をつくりやすい気がする。オムニバス映画に近い構造である。

⒉卒業式の同伴登校
小野莉奈演じる由貴が東京の大学に進学するけど、相手が地元進学で進む進路が違うことで仲違いして疎遠になっている。でも、このまま高校生活をおえるのはマズイと彼を電話で誘いだして、明朝一緒に登校しようと誘いだしたのだ。このシーンを観て、自分が高校を卒業する時に同伴登校する2人がものすごい話題になった事件を思い出した。

男はラグビーの名プレイヤーで、自分の学校では一大行事だった運動会の団長であった。女は陸上走り幅跳びの選手で、各スポーツクラブの人気者から羨望のまなざしで見られた女子高校生。このスクールカースト上位の2人が卒業式に同伴登校しただけで、卒業式はその話題で持ちきりとなり、それから1年以上現役進学、浪人と進む進路が分かれた面々がそれぞれこのカップルの話題を持ち出した。


夜のクラブの女の子と同伴出勤するのとは異なり、高校時代は一緒に登校すること自体が付き合っているのと同値になっていたからだ。こんな話をずっと忘れていた。映画ってすごいよね。押し入れの奥底にしまっているような想い出を引き出してしまうんだから。ちなみに、その2人は結局結婚して2人の子供を作ったが、離婚した。そこにもドラマがあったが、ここではやめておこう。

⒊自分の想い出
幼稚園の卒園式だけはどうしても思い出せないが、小中高、そして大学それぞれの卒業式に想い出がある。高校の卒業式は3月18日講堂でクラスの代表が卒業証書を受け取る場面が脳裏をよぎる。東大をはじめとした国立の発表は3月20日だった。その結果がわからない状態でも私立は合否がわかって、浪人覚悟も大勢いた。

今時だったらコンプライアンスでエライ大騒ぎになる話だが、当時目蒲線だったある駅にある飲み屋で卒業式打ち上げをやった。自分が部活のOB会の飲み会で使ったことのある飲み屋をアテンドした。いつもOBに飲まされていた。2日後に東大や京大に合格する男もその場にいたし、女性陣もいた。結局、酔っ払いすぎて、前後不覚になって御嶽山にある友人宅に担ぎ込まれた。まあ、ひどい話だけど、楽しかったなあ。本当、今の高校生はかわいそう。


⒋卒業したくない
今回の主人公たちは「卒業したくない」とそれぞれ言う場面がある。今のままでずっといたいと。先日大学の同期5人で飲んだ。その会話の中で、「戻るんだったら、いつの時代に戻りたい?」という話題になった。紅一点の女性は高校時代と言っていた。


小学校から一気通貫の彼女は、名前を言えば誰でも知っている人の子孫にあたる上級国民出身で教育ママ羨望のルートを歩んでいた。若い頃は大学で3本の指に入るすごい美人であった。「なぜ高校なの?」と言うと、小中が共学で、高校で女子高になって、それがムチャクチャ楽しかったそうだ。自分にはわからない世界だ。

でも、その彼女がずっと幸せだったわけではない。夫の不貞で財産問題と離婚訴訟が起こり、ハチャメチャになる。一時はあの美貌がかなり衰えた。美形で何もかも恵まれた人が必ずしもずっと幸せになるわけではない「ずっと卒業したくない」と言っている時がいちばん幸せなのかもしれない。
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