映画とライフデザイン

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映画「いつか君にもわかること」ウベルト・パゾリーニ&ジェームズ・ノートン

2023-02-18 18:09:28 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「いつかの君にもわかること」を映画館で観てきました。


映画「いつかの君にもわかること」は映画「おみおくりの作法」の監督ウベルト・パゾリーニの作品である。「おみおくりの作法」は日本でも阿部サダヲ主演で「アイアムまきもと」としてリメイク公開された。実に泣ける作品だ。そのウベルト・パゾリーニの作品であれば間違いないだろう。この作品も泣けるという評判だけ確認して映画館に向かう。

妻と別れて4歳の息子マイケルをシングルファザーとして育てる34歳になろうとするジョン(ジェームズノートン)は自分の余命が短いことを知る。育ててくれる親を探そうと、ソーシャルワーカーとともに子をもとめる親に会いにいく話
である。


ジーンとくるものがあるが、感傷的ではない
一般にこの手の映画は、お涙頂戴のエピソードを重ね合わせることが多い。でも一歩置くウベルト・パゾリーニ監督のインタビュー記事によると

これを映画として届けるには、観客のための余地をきちんと作る必要があると思いました。それはつまり感傷的なメロドラマにはしないということ。登場人物たちが泣き腫らしたり、成長した息子が父の墓に行くようなシーンがあると、あまりに極端で深刻な状況が続くことになり、観客がそこに入り込む余地を失ってしまう。

普遍的な生活の積み重ねを一つの風景画のように見せることが出来れば、観客は共感してストーリーに入っていける。(CINE MORE 香田史生インタビュー記事引用)


泣ける映画という評判があったので、映画を見終わったとき、あっさりとした印象を持った。もっと観客を感涙に誘導するシーンがあってもいいのになあと思ったものだった。なるほど、こういうことだったのね。

それでも、映画館の中では、終盤に向かうにつれて女性陣のすすり泣く声がずっと響き渡っていた。何せ、息子マイケルを演じるダニエル・ラモントかわいいこんなかわいい子と別れるなんてと想像しただけで、別に自分の子供でなくても悲しくなってしまう。しかも、「養子はイヤだ」というセリフがあったり、「死ぬ」ことについての素朴な疑問が次々と出てくる。そんなセリフだけでも切なくなるのだ。


父親役は「赤い闇 スターリンの冷たい大地」でナイーブな英国人記者を演じたジェームズノートンである。2020年日本公開では個人的には評価している映画だ。ただ、映画を観ているときには同一人物だとまったく思わなかった。ときおりやけになるときもあるが、子供のことを思うと養父母を淡々と探す父親になりきっている。好感が持てる。

映画を観ながら、父の本当の親のことを思った。この映画を観る前は、まったく考えもしなかった。父は1才になる前に、養父母の元へ行った。父の実父母は戦前は不治の病だった結核に2人ともかかり、父が預けられてまもなく2人とも亡くなっている。映画に近い状況である。

細かい言及はあえて避けるが、父を預けるときにどんな気持ちであったのであろうか。この映画を観ながら、ふと考えてしまう。父の実父母の親族との付き合いはまったくないので、当時何を考えていたのかはわからない。


父の養父母は2人の子どもを授かったが、幼い頃に亡くなっている。大正から昭和にかけての医療事情ではやむを得まい。私はその祖父母にかわいがってもらった。本来だったら孫はいない。人一倍ぜいたくさせてもらった。感謝しかない。父を引き取ったときの気持ちは母が祖母からきいている。いろんなことを振り返るきっかけにもなった。
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