映画「インヒアレント・ヴァイス」を名画座で見てきました。
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品は公開すぐいくべきだったが、多忙でいきそびれる。早稲田松竹でやってくれるのはたいへんありがたい。自分と同じように見そびれた連中がいるのであろう。平日なのに意外に入っている。
でも変な映画である。私立探偵の元に美女がある依頼をしてきて、探偵が不条理な陰謀に巻き込まれるというのはフイルムノワールの定跡である。「マルタの鷹」や「三つ数えろ」など1940年代から50年代に同じパターンはいくらでもある。そのルールを守りながらも、この映画何が何だかよくわからない。軽い解説がついているけど、この人味方なの?それとも敵?って見ている自分を惑わせる。ロス市警が絡んでくるので、いつもながら警察自体も正義の味方かどうかがよくわからない。
そんな感じで映画はどんどん進むが、70年代初頭のニクソン政権時代というのは厭戦ムードが残り、ヒッピーや反体制の人たちが暴れ回っていたときで、その時代背景を映像がとらえているので楽しめる。尾崎紀世彦ばりの濃いもみあげがトレードマークの主人公探偵に、訳のわからない人間を大勢からめて作者が遊んでいるようなタッチである。そのそも原作があるんだけど、有名な著者らしいが自分は知らない。
たぶん観客のみんなはいずれも「わかんねえなあ」と思いながら映画を見ていたのかもしれない。単純な1つの依頼だけでないからであろう。それでも誰も席をたたないのはアンダーソン監督「マグノイア」で突如カエルが天から降ってきたのと同じような意外性を期待したのであろう。さすがに最後に向けては手が込んでいた。
1971年、ロサンゼルスに住む私立探偵のドック(ホアキン・フェニックス)のもとに、ある日突然、かつて付き合っていたシャスタ(キャサリン・ウォーターストン)が現れる。 開口いちばん、「助けて、ドック」とシャスタ。不動産業界の顔役ミッキー・ウルフマン(エリック・ロバーツ)の愛人になったシャスタはドックに、カレの妻とその恋人が大富豪の拉致と監禁を企てていると訴え、その悪だくみを暴いてほしいと依頼する。
ドックにとってシャスタは、忘れられない女である。ドックは独自の調査を開始する。ドックは、ロサンゼルスの情報通リートおばさん(ジーニー・バーリン)に電話し、ミッキーの情報を得る。ドックは、ミッキーに会うべく、建設工事の進む新興住宅地に出向く。近くにマッサージ・パーラーがあり、ここにミッキーの用心棒のグレンがいるらしい。受付にはジェイド(ホン・チャウ)と名乗る若い女がいる。ジェイドが席を外す。ドックは店内を物色する。ところが突然ドックは何者かに殴られて気絶してしまう。気がついたときには、隣にグレンの死体が転がっている。
ビッグフット(ジョシュ・ブローリン)と呼ばれているロサンゼルス市警の警部補にドックは殺人容疑で取り調べを受ける。濡れ衣だ。仕事柄ドックはビッグフットと顔見知りである。ビッグフットから、ミッキーが行方不明と聞かされる。ドックの友人の弁護士ソンチョ(ベニチオ・デル・トロ)が、不起訴の申請にやってきて、証拠不十分でドックは釈放される。
ドックは、裏でつきあっている地方検事補のベニー(リース・ウィザースプーン)、ソンチョに、事件解明の協力を取り付け、独自の調査を進めていく。
ドックの調査が進むにつれて、麻薬組織の影が見えてくる。ロサンゼルス市警やFBIを巻き込んだ大きな陰謀も感じられるのであるが。。。
1.ポール・トーマス・アンダーソン監督
「ゼアウィルビーブラッド」の時は狂犬のようなダニエルデイルイスの演技が本当にすごいと思い、感動のあまり文章がまとまらずまだ感想が描けていない。「マスター」では新興宗教をひきいる故フィリップ・シーモア・ホフマンの演技もさることながら、映像表現が非常に美しいと感じた。今回その次の作品だが、そこまでの感動はなかった。登場人物も多すぎで、原作にある伏線を全部入れようとして失敗したという感じもする。らりっているような感覚はちょっと苦手だ。
2.ジョシュ・ブローリン
「LAギャングストーリー」でロス警察の敏腕刑事を演じた。それに引き続くものである。警察の捜査陣というのが実にキャラがよく合うし絶妙にうまい。ニックネームのビッグフットというのは玄関ドアを蹴って室内に入ってくるからつけられたあだ名という設定だ。事実映画の中でも蹴っ飛ばして入り込むシーンもある。日本料理屋で坂本九の「スキヤキ(上を向いて歩こう)」が流れた後に、ちょっとおかしな日本語をしゃべっていたのが印象的だが、何を言っているのか意味不明だった。
3.キャサリン・ウォーターストン
可憐な元恋人が出現する。美女が探偵に依頼するのはフィルムノワールの定跡通りだが、しばらくすると姿が見えなくなる。どうしたのかな?と思っていたら後半戦に向けて再登場だ。これがいい味出していた。スレンダーな体つきに形のいいバストを見せる。チラ見だけなのかと思ったら、長まわし。これが割と長くて、そのままホアキン・フェニックスと絡んで独りよがりのファックシーンを見せつける。キャサリン・ウォーターストンのヌードシーンがこの映画の一つのヤマだ。彼女の名前は初めて知ったような気がするけど、くたびれたようで全身からエロオーラを出していい感じだ。
4.冴えわたる音楽
バックに流れる音楽がよくなかったら、この映画の独特のムードは出し切れなかっただろう。ヒッピー系のじんぶつだけでなく自宅のプールでくつろぐようなブルジョアもふんだんに出演させるところもロスっぽい。70年代前半のヒットチャートものだけが次々流れるというわけでない。何せ「スキヤキ」まで流れてしまうのであるから。それなのにこの時代のロスが舞台とわかるような響きがある。。ニールヤングの歌が妙に映像にあっていた。胸にしみる。
(参考作品)
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品は公開すぐいくべきだったが、多忙でいきそびれる。早稲田松竹でやってくれるのはたいへんありがたい。自分と同じように見そびれた連中がいるのであろう。平日なのに意外に入っている。
でも変な映画である。私立探偵の元に美女がある依頼をしてきて、探偵が不条理な陰謀に巻き込まれるというのはフイルムノワールの定跡である。「マルタの鷹」や「三つ数えろ」など1940年代から50年代に同じパターンはいくらでもある。そのルールを守りながらも、この映画何が何だかよくわからない。軽い解説がついているけど、この人味方なの?それとも敵?って見ている自分を惑わせる。ロス市警が絡んでくるので、いつもながら警察自体も正義の味方かどうかがよくわからない。
そんな感じで映画はどんどん進むが、70年代初頭のニクソン政権時代というのは厭戦ムードが残り、ヒッピーや反体制の人たちが暴れ回っていたときで、その時代背景を映像がとらえているので楽しめる。尾崎紀世彦ばりの濃いもみあげがトレードマークの主人公探偵に、訳のわからない人間を大勢からめて作者が遊んでいるようなタッチである。そのそも原作があるんだけど、有名な著者らしいが自分は知らない。
たぶん観客のみんなはいずれも「わかんねえなあ」と思いながら映画を見ていたのかもしれない。単純な1つの依頼だけでないからであろう。それでも誰も席をたたないのはアンダーソン監督「マグノイア」で突如カエルが天から降ってきたのと同じような意外性を期待したのであろう。さすがに最後に向けては手が込んでいた。
1971年、ロサンゼルスに住む私立探偵のドック(ホアキン・フェニックス)のもとに、ある日突然、かつて付き合っていたシャスタ(キャサリン・ウォーターストン)が現れる。 開口いちばん、「助けて、ドック」とシャスタ。不動産業界の顔役ミッキー・ウルフマン(エリック・ロバーツ)の愛人になったシャスタはドックに、カレの妻とその恋人が大富豪の拉致と監禁を企てていると訴え、その悪だくみを暴いてほしいと依頼する。
ドックにとってシャスタは、忘れられない女である。ドックは独自の調査を開始する。ドックは、ロサンゼルスの情報通リートおばさん(ジーニー・バーリン)に電話し、ミッキーの情報を得る。ドックは、ミッキーに会うべく、建設工事の進む新興住宅地に出向く。近くにマッサージ・パーラーがあり、ここにミッキーの用心棒のグレンがいるらしい。受付にはジェイド(ホン・チャウ)と名乗る若い女がいる。ジェイドが席を外す。ドックは店内を物色する。ところが突然ドックは何者かに殴られて気絶してしまう。気がついたときには、隣にグレンの死体が転がっている。
ビッグフット(ジョシュ・ブローリン)と呼ばれているロサンゼルス市警の警部補にドックは殺人容疑で取り調べを受ける。濡れ衣だ。仕事柄ドックはビッグフットと顔見知りである。ビッグフットから、ミッキーが行方不明と聞かされる。ドックの友人の弁護士ソンチョ(ベニチオ・デル・トロ)が、不起訴の申請にやってきて、証拠不十分でドックは釈放される。
ドックは、裏でつきあっている地方検事補のベニー(リース・ウィザースプーン)、ソンチョに、事件解明の協力を取り付け、独自の調査を進めていく。
ドックの調査が進むにつれて、麻薬組織の影が見えてくる。ロサンゼルス市警やFBIを巻き込んだ大きな陰謀も感じられるのであるが。。。
1.ポール・トーマス・アンダーソン監督
「ゼアウィルビーブラッド」の時は狂犬のようなダニエルデイルイスの演技が本当にすごいと思い、感動のあまり文章がまとまらずまだ感想が描けていない。「マスター」では新興宗教をひきいる故フィリップ・シーモア・ホフマンの演技もさることながら、映像表現が非常に美しいと感じた。今回その次の作品だが、そこまでの感動はなかった。登場人物も多すぎで、原作にある伏線を全部入れようとして失敗したという感じもする。らりっているような感覚はちょっと苦手だ。
2.ジョシュ・ブローリン
「LAギャングストーリー」でロス警察の敏腕刑事を演じた。それに引き続くものである。警察の捜査陣というのが実にキャラがよく合うし絶妙にうまい。ニックネームのビッグフットというのは玄関ドアを蹴って室内に入ってくるからつけられたあだ名という設定だ。事実映画の中でも蹴っ飛ばして入り込むシーンもある。日本料理屋で坂本九の「スキヤキ(上を向いて歩こう)」が流れた後に、ちょっとおかしな日本語をしゃべっていたのが印象的だが、何を言っているのか意味不明だった。
3.キャサリン・ウォーターストン
可憐な元恋人が出現する。美女が探偵に依頼するのはフィルムノワールの定跡通りだが、しばらくすると姿が見えなくなる。どうしたのかな?と思っていたら後半戦に向けて再登場だ。これがいい味出していた。スレンダーな体つきに形のいいバストを見せる。チラ見だけなのかと思ったら、長まわし。これが割と長くて、そのままホアキン・フェニックスと絡んで独りよがりのファックシーンを見せつける。キャサリン・ウォーターストンのヌードシーンがこの映画の一つのヤマだ。彼女の名前は初めて知ったような気がするけど、くたびれたようで全身からエロオーラを出していい感じだ。
4.冴えわたる音楽
バックに流れる音楽がよくなかったら、この映画の独特のムードは出し切れなかっただろう。ヒッピー系のじんぶつだけでなく自宅のプールでくつろぐようなブルジョアもふんだんに出演させるところもロスっぽい。70年代前半のヒットチャートものだけが次々流れるというわけでない。何せ「スキヤキ」まで流れてしまうのであるから。それなのにこの時代のロスが舞台とわかるような響きがある。。ニールヤングの歌が妙に映像にあっていた。胸にしみる。
(参考作品)
ザ・マスター | |
ポールトーマスアンダーソン監督が新興宗教教祖にスポットを与えた前作 | |
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド | |
2000年代の世紀の大傑作。ダニエルデイルイスが凄い | |