映画とライフデザイン

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屋根裏部屋のマリアたち 

2012-08-01 21:53:58 | 映画(フランス映画 )
映画「屋根裏部屋のマリアたち」を渋谷文化村で見た。
すがすがしいドラマで後味が良かった。

劇場内は熟女というより初老のご婦人で超満員であった。最近いわゆるベビーブーム世代と思しき女性群が映画館を占拠することが多い。この映画では彼女たちの笑い声が終始絶えない中、コメディの色彩を含んだアットホームなフランス映画を堪能できた。これほどまでに映画館内が笑いに包まれるのは珍しい。渋谷文化村では初めての経験かもしれない。

1962年のパリが舞台だ。証券会社を経営する主人公ジャン=ルイは妻と二人で広いアパルトマンに暮らしている。息子二人は全寮制の学校に通っていた。前のメイドが辞めて、スペイン人のマリアをメイドとして雇うことになった。卵料理がうまいマリアを夫婦は歓迎した。

マリアたちスペイン人メイドは主人公夫婦が住むアパルトマンの屋根裏部屋に住んでいた。ある日屋根裏部屋の住人たちがトイレが使えなくて困っているのをみて、主人公は水道屋を呼びトイレ修理の手配をしてやった。それがきっかけで、主人公はメイドたちと仲良くなっていった。
主人公は母国との連絡が取れず困っているメイドに電話を貸したり、メイド仲間にアパルトマンの管理人の仕事を世話したりと面倒を見るようになった。メイドたちとの信頼関係ができてきた。あるとき入浴中のマリアの裸身を見てしまった主人公は彼女に特別な感情を抱くようになる。そんな時、主人公のアパルトマンでホームパーティが開かれ、主人公の顧客や夫婦の友人が招待された。その中に社交界で有名なご婦人ベッティーナ夫人がいた。妻のハイソな友人たちは主人公に近づく彼女を見てケアせよといっていた。

管理人部屋を世話してあげた主人公はメイドたちに招待された。そこではスペインから来たメイド仲間たちの楽しいホームパーティが開かれていた。パエリアなどのスペイン料理を食べながら楽しいひと時を過ごし、自宅に電話連絡ができず帰宅が遅れた。妻は心配した。主人公は上機嫌で家に戻ってきた。夫が魔性の女ベッティーナ夫人と浮気していると思い込んだ妻から「家を出て行って!」ときつい一言を。主人公は6階屋根裏の物置部屋で1人暮らしを始めることになった。坊ちゃん育ちの主人公が今までと違う環境に身を置き、妙に居心地がいいのに気づくが。。。


流れの基調はやさしい。
スペイン人のメイドたちは主人公宅のメイドであるマリアを除いては、みんな特徴のある顔をしている。どちらかというと上方お笑い系のタッチだ。ここのところフランス映画を見ていて、妙に人情味あふれる映画が多いことに気づく。高尚なセリフというよりも、笑いを誘うセリフが多く、多くの初老のご婦人にも十分に楽しめる映画であったと思う。みんなゲラゲラ笑っていた。松竹人情物に通じる系統だ。
車の選択も60年代を象徴していて、自分が大好きな亀型シトロエンやプジョーのスポーツカーが繰り返し現れる。衣装もこの時代を明白に表わしていて、時代考証も絶妙だ。
フランコによる独裁政権が1939年よりはじまっていた。それに嫌気をさした亡命者が数多くいたことがこの映画からもよくわかる。

(アパルトマン)証券会社を代々経営している主人公の家族はフランスではブルジョアジーというべき階級であろう。田舎娘と自分で言っている妻もハイソサエティな奥様たちとカードゲームをして遊んだりしている。そんな家族とメイドたちが同じ屋根の下で暮らすとは凄い話だ。もっともメイドたちが住む6階にはシャワーもなく、洗面の水を共用している。屋根裏部屋だから夏は暑いだろう。住むには条件の悪い所とはいえ、ブルジョアとの同居はあること自体凄い話だ。

(投資の勧め)仲良くなったメイドたちが、稼いだ金をタンス預金をしているのに主人公が気づく。「もったいないじゃないか、家を母国でもちたいならもう少し増やせるよ」とばかりに彼女たちにいい、株式の購入を勧めるシーンが微笑ましい。共産主義にかぶれるメイドの一人が株式は資本主義の悪の象徴のようにいうのに対して、主人公がやさしく株式の重要性を説明していく。彼女たちが現金を持って主人公が経営する証券会社に行って口座を開く。自分たちが購入した銘柄の値動きを新聞でチェックするシーンは面白い。

中盤から終盤にかけてのつなぎ方も巧みだ。小さい笑い話をちりばめ主たる話をフォローする。
余韻を残したのもいい。
力を抜いて気楽に楽しめるいい映画だ。
コメント
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