やっと雨があがり、ひかりがさしてきた。それを察してか庭のエゴの木に蝉のぬけがら。朝の光をあびた若葉の中にまだ生気を帯びているかのようなような抜け殻がしっかりへばりついていた。いままで生身の生体を活かしていた器であるからして当然かもしれない。
蝉は地中で幼虫として数年生き、さなぎになって地上にはい出て木にのぼり背中からわれてその皮をぬぐ。その皮を空蝉という。そばの枝に脱皮して羽が黒くなり始めた成虫がじっと木にへばりついていた。今日から10日ばかりの短い一生を力いっぱい鳴きながら全うする。
尾張俳壇の重鎮だった也有に 我とわが殻やとむらふ蝉の声 という句がある。「無常迅速」人生80年長いようであっという間のかもしれない。