僕の感性

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殺菌のための火入れ

2008-03-24 22:42:56 | Weblog
 1850年代に、パスツールはブドウ酒の殺菌に低温加熱法を発明し、近代微生物学や近代食品学の基礎を作りました。ブドウ酒の腐敗や変質を防止するために、60度の湯の中で30分程加熱したそうです。

 日本では奈良時代には、組織化された酒造りが始まり、平安時代になると、今日の清酒よりもっと多くの種類の酒がありました。室町時代に書かれた「多聞院日記」には、酒造りの覚書があり、そこには「酒を煮させ樽に入れ了(おわ)る」と記されています。 当時の火入れの温度は大体50~60度で、5~10分間程度保ったと推定されており、今日の火入れと大差ない驚くべき方法だったそうです。火入れの目的は殺菌にあったのですが、それとともに酒を早く熟成させようとする効果も狙ったらしいのです。

 日本人は偉大なるパスツールより約300年も前に低温殺菌法を発明し、実用化していたのですから、その知恵は計り知れぬ深さであったに違いありません。