初めて知る高齢という現実

最近、弱ってきたオット82歳。
何とか二人で明るく過ごしたいとあがく毎日を記録します。
だんだんグチに移行?

・富士日記について

2007年08月23日 12時45分53秒 | 読んだ本のこと
先日、朝日新聞の書評で読んだ本が読みたくて
街に出たついでに買った本。

武田百合子さん著「富士日記」である。

覚えていないことを書くのは、失礼ですが
以前、百合子さんの著書を読んだことある。

気負わずたんたんと、ユーモアもあり、
面白い人だなぁと思った覚えがある。

この「富士日記」上・中・下と文庫ながら
3冊あり、今は上を読破中であるが、
この本買っててヨカッタ。
今の私の、中途半端なゆれる心持ちの時期に、
この本を読む行為が慰めになるし、楽しみである。

日記は昭和39年7月から始まり、昭和51年9月まで。

東京が住まいであるが、富士の裾野に別荘を持ち
富士山荘での生活のみが日記になっている。

土地の人々との交わり、その日に買った品物と値段。
富士の気候や天気、木々のそよぎや、小鳥・小動物の
動き、その日の朝・昼・夜の食事の献立など
何でもないことのようで、その時百合子さんの目に
写ったことが、克明に記されていて、思わず引き入れられる。

1925年のお生まれで1993年に亡くなっている。
今計算してみたら、68歳でなくなったのかぁ。
作家の武田泰淳の妻として、この日記も夫の泰淳さんから
勧められて書き始めている。
その当時、出版されることなど頭にないだろうから
言われるままに記録のつもりであろう。
でもイヤだとは一言もないので、もともと文才があり
書くことは、日常の夫を見ていて好きだったのであろう。

1935年に生まれた私と10歳違いの年上である。

その当時の同じ空気を吸っていた社会状況が思い出されるし、
今と比べると不自由さがあった時代だなあと
まさに隔世の思いがする。
でも、地に足をつけて、人々はしっかり生きていたなあと
思わずにいられない。

ある程度の年がいった人にはわかると思う。

ある程度っていくつ?


そうね、50歳より上のひとね。









・図書館の本

2007年07月02日 13時49分42秒 | 読んだ本のこと
まとまった仕事らしきことを、思いついても
やる気ナシの今日この頃…

久しぶりに図書室に連れて行ってもらい
3冊借りてきました。
人を待たせているので、吟味することなく
ザーッと見ての3冊。

1冊目、藤堂志津子「夫の息子」
2冊目、島田雅彦「退廃姉妹」
3冊目、宗田理「13歳の黙示録」

藤堂志津子さんは手馴れた文体の
今風の夫婦というか男と女の話。
へぇ~と思いながら読むのは、ばばぁだからカナ?

島田雅彦さんは初めて読んだ。
[4大学在学中の1983年、『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。新世代作家の登場と注目を集める。]         
とウィキペディアにあった。

この「退廃姉妹」は時代設定が、戦争の終わるころから
戦後の混乱の時期である。
若い人が(1961年生まれ)良くあの頃のことを
書けたと感心する。

また、ウィキペディアから引用すると
[自称「サヨク」。
軽妙かつ不可解な、唯一無比の特異な文体が特徴で、随所に、読者を馬鹿にする捻くれたユーモアと、エスプリが散りばめられている、とも評される。 「村上春樹は下らないファンタジーだ」と、彼を全否定している。]

と面白い評があった。

この本には、読者を馬鹿にしたところは感じられず
至極真面目に、淡々と書かれている。
その、ベッタリしない文章が好みに合っている。

で、夜中にまた起きて最後まで読んでしまった。
3~4時間で読むのは作者に済まないと思う。

返却するまで期日があるので、また読み返したいと
思っている。


・石原慎太郎著「弟」

2007年02月24日 12時54分43秒 | 読んだ本のこと
石原慎太郎さんの『弟』を読みました。
1996.7.17に第1刷発行とあり
1996.7.24に第5刷発行とありますので
発行と同時にすごい勢いで売れたんでしょうね。

“おーい裕さん、それでお前は今、どこで何をしているんだ!”

見開きのこの一行に兄の心を感じました。

見ることは出来なくなった肉親は、別の世界で生きていると
思ってしまう気持ちは同感できます。

あの有名な石原裕次郎を弟に持ち、切磋琢磨の時代を過ごし
叶うことなら、弟側からの兄を書けば面白かったと思います。

下世話に思うより兄は弟思いでした。
弟は幼い時から優秀な兄を傍らに見ながら、やんちゃで兄を凌ごうと
したんではないかと思います。
高校時代から勝手のし放題、酒・女・ケンカと面白おかしく
時間を過ごしますが、時代の波があり、人を人と思わぬ態度も
古い体質から、なかなか抜け出せないでいた、映画界の人たちに
新鮮と受け取られ、たちまち人気者となり、時代の寵児となります。

裕次郎は小さい頃から、怪我が多く、入院もたくさん経験します。
高校生の頃に強度の黄疸を経験していますが、若さで押し通し
さしたる治療もせずに治していますが、肝臓に負荷を残した
ことだろうと、兄は思います。

そして最後は肝臓がんに襲われ、映像として見たことのある、
慶応病院の屋上で手を振る光景から、5年後に亡くなります。

病気の苦しさから、再起できない肝臓がんの病名を知れば
自殺するかもしれないと恐れた、周りの人たちにより病名は伏せられ、
「オレはがんだろ?」と疑いつつ誰も頷いて呉れない煩悶。
兄は告知したいと思いながら、周りの努力に対して裏切れないのです。
それぞれが本気で弟を守っていると思うから…

そして病気と壮絶な闘いも終わりを告げます。

中身を抜粋すると、
『喘ぎが速く小さくなるにつれ、弟の様子はいかにも苦しそうだった。つり上げられた魚が水中での呼吸を求めて喘ぐように、口を歪めながら、与えられた呼吸を懸命に求めていた。それはまさに世にいう、最後のあがきという様子だった。
私がその時懸命に願ったのは、直截に、弟が一時も早く死ぬことだった。
死しか弟を救わぬことがよくわかった。
思えば、人間というのは時に応じて何を期待することも出来るものなのだ。
私が本気であの時願ったことは、私のためにも、今、目の前で出来るだけ早く弟が死ぬことだった。
「もういい、裕さん、もう死んでもいいんだよ」
辺りをはばからず、繰り返し声に出して私は弟にいっていた。』

それでも二度ほど息を吹き返し、最後は信じられぬほど穏やかに安らいだ表情を浮かべながら、完璧な安息の世界に入っていった。
まだ52歳であった。

それから約10年経って書かれた兄による鎮魂歌である。

・東京タワーを読んで(1)

2007年01月19日 14時58分04秒 | 読んだ本のこと
先日読みかけの「東京タワー」
“オカンとボクと時々オトン“のことを書きましたが、
昨夜読み終わりました。1時でした。

楽しみにして明日読もうと思いながら、
止めることが出来ませんでした。

あのオビにある、泣く、泣かされた、は終わりにありました。

人間一人生まれて、環境に左右されない人生はあり得ません。

彼、リリーフランキーさんも、オカンの愛に包まれながらも、
何の仕事をやっているのか理解できないオトン、
一緒に暮らさなかったオトン、オカンの考えで離婚はしないまま、
節目のときのフラッと現れるオトン、
これ以上のマイ・ペースはない勝手なオトンを、
視野には入れなかったハズだったけど、
やはり大きな壁・バックとして感じていますし、
育った小倉の街やおばぁちゃん(オトンの母)、
そのあとオカンの実家がある、筑豊のさびれた炭鉱町へ
転居して、そこで一人暮らしのおばぁちゃん(オカンの母)
の家で暮らすことになる。
リヤカーを引きながら、魚を売り、
9人の子どもがいながら、誰の世話にもならず、
ジャーの中の黄色くなったご飯を食べるおばぁちゃん。
優しさの表現が下手なおばぁちゃん。

リリーさんの目に生きることの「虚無」を
このおばぁちゃんの姿から感じている。


勝目梓氏の「小説家」を読んで(3)

2006年12月23日 12時15分47秒 | 読んだ本のこと
その後彼も結核に罹るのだが、ちょうど新薬が出始めていて、
その新薬のおかげで、劇的に回復する。

父親や兄が結核で病死して、自分も同じ結核に罹りながら
生きながらえたということは、その後の彼の生き方を、
大きく変えたのではなかろうか。
私は彼の心の底に沈む、虚無を感じずにいられない。

勉学に対し興味をなくしていた彼は、17歳で高校を退学し、
伊万里湾に浮かぶ福島という島の炭鉱に就職する。

その後いろんな体験をしながら、生活は楽ではないのだが、
文を書くことは止めなかった。
朝5時から7時までは執筆の時間と決めて書き続けた。
その努力が、有り余る問題を抱えながら生きる彼を、
流行作家に押し上げる。

詳しくここに述べることは出来ないが、
常人では出来ない行動も出来る人には出来るのだ。

年を取った今、彼の生きる道にはしなくも巻き込まれ、
望まざる人生を送った人たちへの鎮魂歌となるであろうか。

私には興味深く、「彼」と一体になり読めた本であった。
他にも読んで見ようと思う。



勝目梓氏の「小説家」を読んで(2)

2006年12月22日 10時04分30秒 | 読んだ本のこと
現代は、なんでもありの世の中と言われ、思われています。
自由奔放さも、昔とは比べられない枠なし…なのですが
それもニンゲンの性格ではないかと思いますね。

周りが乱れていても、乱れることができないニンゲンは乱れないし、
真面目や規律の城壁に囲まれていても、乗り越える人は
軽く乗り越えて、周りは目に入らなくなります。

勝手な生き方は、関わる人を不幸にしますが、勝手なニンゲンにも
理屈があり、そうしなければ生きていけないのではないだろうか。

彼は、東京で生まれ。
父母の離婚により母の郷里、鹿児島で暮らし始めたが
当然なじめなかった。

父親は小学校4年生の初冬に結核で病死した。
当然死に目には会っていない。
13歳で終戦を迎えるが、鹿児島にも空襲があり大勢の人の死を見た。
祖父母もその空襲で死んだ。

彼は5人兄弟で、7歳違いの兄がいた。
父母の離婚により、父親に引き取られ暮らしていたが
父に引き続き兄も結核に罹り、不憫な兄を母が呼び寄せ
鹿児島のサナトリュ-ムに入院させるが、
22歳の若さで死んでしまう。



・勝目梓氏の「小説家」を読んで(1)

2006年12月21日 14時14分56秒 | 読んだ本のこと
今回は「小説家」という本を借りました。
著者は「勝目梓」氏です。
恥ずかしながら、始めて目にしたお名前でした。
で、新人作家と思いました。
ところが、私の認識不足をモロダシにした話になりますが
私より3歳年上の74歳のベテラン作家でした。

グーグルで検索しましたら、ハード・サスペンス、ハード・ボイルド
ハード・バイオレンスロマンス(これの意味が分からない私です)
等々を、次々と出版された流行作家でした。

どちらかというと、私の分野でなかったので、視野に入ってなかったのだと
思います。今はどれか一冊でもいい、読んでみたいです。

この「小説家」は主人公を「彼」と呼んで三人称で書かれていますが
「彼」は勝目氏自身です。(三人称でいいのかな?)
私が育った時代と「彼」と呼ばれる男との時代背景が一緒なので、
こんなにすんなりと頭に入って理解できた本はありません。

今年10月に出版されたのですから、最近執筆されたもので
70歳を超えて、今までの生き方を振り返り、とことん掘り下げ
「彼」の尋常でない、それこそ破天荒といえる女性関係など
赤裸々に抉り出す作業は、つらい作業ではなかったかと思われます。
でも、50や60では書けなかった、70でやっと書けた小説だと
理解できました。

・道頓堀の雨に別れて以来なり

2006年11月29日 12時59分23秒 | 読んだ本のこと
久しくupしていない本の話。

寝るときはずーと、読んでいるんですよ、これでも。

いまNHKの連続小説「芋たこなんきん」の原作者田辺聖子さんの本で、
大阪生まれの川柳作家、岸本水府さんの生涯を書いた
「道頓堀の雨に別れて以来なり」を借りて読みました。

聖子さんは川柳大好きで、水府に心酔し、生き様について
細かく記録というか足跡を掘り起こし、
川柳を文学と捉えて書いておられます。

もちろんそれは水府さんの願うところであり、目指すものです。
川柳といえば、古川柳が一般的に人の頭にはいり込んでおり、
上品さに欠けたいやらしさが普通と思われていた時代、
愛とユーモァと品位を持つ、文学までに
川柳を引き揚げるのは容易ではなかったのです。
「番傘」という雑誌を発行し続けて多くの川柳作家を育てました。


私はドアホなもんで、上巻のつもりで借りて読み始めてから
これは下巻だと分かりました。
仕方ないので、上巻は飛ばしました。

今度借りるチャンスがあれば、逆になりますが
上巻を読みます。

昨夜読み終えたのが藤沢周平さんの「漆の実のみのる国」です。
これについてはまた書きます。






・涼しい朝

2006年09月24日 09時36分16秒 | 読んだ本のこと
お彼岸中日の、昨日午前は、納骨堂の先祖供養の慰霊祭でした。
今日から3日間、お寺の彼岸会供養でご奉仕でございます。

アチラ側とのお付き合いが、だんだん深くなって参ります。
そのうち抜き差しならぬところへドップリ嵌まりこむのでしょう。

ナマンダブ…ナマンダブ…




ハヤカワ・ミステリワールド
高村 薫著『マークスの山』を読みました。

娘婿が「ブックーオフ」から買って来ておりました。
なんと105円の値段に驚きました。
441ページの分厚い本ですよ。
定価は、1800円です。
ブックーオフは幾らで買い利益は幾らだったんでしょうか。
これこそミステリーです。
私もブックーオフで買いたくなりました。

本の内容は、カバーの文句の一部を借ります。
「冷血の殺人者を追い詰める警視庁捜査第一課七係 合田刑事らの
活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生!
昭和51年南アルプスで播かれた種は16年後、東京で連続殺人として
開花したー精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークスが跳ぶ」

数十年に渡る因縁のある、重い内容でした。
ミステリーは終わりまで止められません。
じっくり読みましたが、警察内部の抗争ぶりが、なんじゃなんじゃと
思います。警察の課や、各署や、とにかく功名を争う者たちが入り乱れて
名前さえロクに覚えられない始末。

ダメジャーわたし。
でもまた、ミステリーを読みたい私です。




・町田 康さん

2006年08月25日 09時05分45秒 | 読んだ本のこと


町田 康さん
1962年大阪府生まれ 今年44歳。

平成12年台123回芥川賞受賞。
異色の作家です。

高校時代から町田町蔵の名前でバンド活動を始め、
パンクバンド「INU」の「メシ喰うな」
でレコードデビュー。

96年「くっすん大黒」97年にこれで野間文芸新人賞。
ドゥ マゴ文学賞受賞。
著書に「屈辱ポンチ」「夫婦茶碗」「つるつるの壺」
「へらへらぼっちゃん」「耳そぎ饅頭」他

今回は「きれぎれ」を読んだ。この作品で芥川賞受賞です。

以前に「告白」を読んでいる。
最初私は、ぎょえぇと思った。
どうしてそう思ったか?こんな文体初めて読んだ。
こんな形容詞初めて見た。おかしな本、自由な本。
昔「河内十人切り」という事件があって、それを下敷きに
書いてあるのだけど、主人公の思いのたけを書いてある。
随分厚かった「告白」を面白がりながらすぐ読み終えた。

「きれぎれ」もオカシイ。
勝手気ままな書きよう、脳から直結している口がベラベラ。
筋はあるようなないような。いや、あるんだけどね。
彼が歩んできたパンクバンドそのままなんだろうなぁ。

どんな風にオカシイかちょっと書き写してみようか。

“いのち棄てます桶狭間げほげほげほげほ限界を超えた大声を出したため、喉が破れて咳きこみながらも、痺れるような幸福感を感じつつ俺は僕はエンディングを決めた、と、そのとき、右の紗のような巾の奥から、サッカーボールくらいの丸いぬらぬらしたものが飛び出てきて、俺の腹に、ぼん。とぶつかり、「なんだ貴様。貴様、貴様、貴様はなんだ。貴様」と怒鳴った。”

書き写し間違いは1字とてありませんので、ご心配なく…
とこのような文体が全編続きます。

線路は続くよどこまでも…ではないけど、
この文章がでれでれどろどろずらずらと続き、あらゆる語彙が並びます。
オモシレーと思うか、バッカみたいと思うか。賛否両論噴出!

「きれぎれ」の帯の紹介すると

[ふりそそぐ閃光。
光にぬめる悪意。ねじまがる心と体。
空に君臨する俺。
時空間をも超越して、
町田節が
パワフルに炸裂する。] とあります。

興味のある方はご一読を…