3月のダイヤ改正からJR烏山線で運転が開始された本邦初の蓄電池駆動電車EV-E301系に乗ってきました。
EV-E301系電車はJR東日本が研究・開発を進めてきた蓄電池駆動電車システムを使った営業用電車で、量産先行車1編成2両が総合車両製作所で製造され、小山車両センターに配置されています。そのシステムは、大容量のリチウムイオン電池を1両あたり5個、2両編成で10個を床下に搭載し、電化区間(宇都宮ー宝積寺間)ではパンタグラフから集電した電力で通常の電車と同様に走行、同時に蓄電池への充電を行います。非電化区間(宝積寺ー烏山間)ではパンタグラフを下ろし蓄電池の電力を使用して走行、減速時には回生ブレーキを使用し、発生した電気で走行により消費した電力を充電します。折り返し駅(烏山・宝積寺駅)ではパンタグラフを上昇させて構内に設置された架線から蓄電池へ急速充電を行います。
文字だけではよくわからないと思いますので、車内モニターに表示された図を撮ってきましたので、そちらをごらんいただきながら解説をいたしましょう。ちょっとぶれて見づらいかもしれませんが。
烏山の一つ手前の滝駅に到着するEV-E301系電車です。屋根にはパンタグラフが乗っているのですが、折り畳まれています。到着時はVVVFインバーター車両のモーター音がして、ちょっと違和感があります。
非電化区間の駅で停車中は蓄電池の電力を電源にして空調や照明を動かします。とはいえ蓄電池の電力を直接供給するのではなく、SIV(静止インバータ)を介して電圧を下げて空調や照明に利用しています。
発車時に運転士がノッチを入れると蓄電池の電力を制御装置を介してモーターへ供給。するとVVVFインバータ車独特の起動音がして列車は動き出します。もちろん加速を終えて惰行運転に入るとモーターへの電力供給は絶たれ、停車時と同じように蓄電池の電力は空調等に使われます。
駅が近づきブレーキをかけると今度はモーターが発電機となって電気を起こします。これが回生ブレーキと呼ばれるブレーキで、回生ブレーキによって発生した電気によって蓄電池へと充電されます。
終点に到着すると、パンタグラフが上昇し、消費した電力を今度は架線からの電力で蓄電池へと急速充電します。その時間わずか5分。驚くほどのスピードで充電が完了します。そして発車までの空調や照明への電気の供給は架線からの電力を使用します。このような仕組みで蓄電池駆動電車は運転されています。
烏山線にこの蓄電池駆動電車が導入されたのは、現在の蓄電池の容量で問題なく運行できる距離であったこと、また電化区間に乗り入れの運用があり、電化区間での充電が可能なことから烏山駅に充電設備を設置して、今回の運転開始となりました。今後烏山線で運転されている気動車はこのEV-E301系で置換えられる予定です。
烏山線は直流電車ですが、JR九州では交流電車を使った蓄電池駆動電車システムの試験が行われているようで、実用化されれば九州の非電化区間でもこのシステムを使った電車がお目見えすることになるかと思われます。将来的には交換駅などに充電設備を設置して充電できる体勢が整えば、非電化区間を走る電車が増えることでしょう。
架線がなくても「電車」が走ることが当たり前のことになる時が近くに来ているのでしょうか。