「凡そ、鐘の声は黄鐘調なるべし」、鐘の音が、黄鐘調とは、インドの祇園精舎の無常院にある鐘の音と同じで、人の心に響くのでしょう。
実際は、鐘の起源は、インドではなく、中国の青銅製の金属楽器だそうです。中国から朝鮮半島を経て、日本に伝わったとのことです。現存する鐘の多くは、日本で鋳造されたもので、和鐘と呼ばれます。
鐘の音と言えば、馴染みのあるのは除夜の鐘です。黄鐘調とは、日本の雅楽でも基本となる音で、ハ調のラ音だそうです。鐘の音は、「アタリ」「オシ」「オクリ」と三つの部分に分けていて、「アタリ」は打音で、グオーンという音です。それに続く「オシ」は高く安定した、遠くへと届く音です。最後に、段々と減衰していく余韻のある音、「オクリ」です。この三つが上手いバランスで構成されるのが、理想の鐘の音なのでしょう。そのような鐘は、そう簡単には造れません。
鐘は、日本固有の文化・技術の結晶だったんです。戦前、この鐘を戦争のために鋳つぶし、国宝級の鐘の多くが失われました。それらも、戦争の犠牲の一つでしょう。