「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

いにしへのはあはれなること多かり 2005・03・29

2005-03-29 07:00:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「今人のうちに友人が得がたければ、古人にそれを求めるよりほかはない私は早く今人に望みを絶った二葉亭(四迷)に親炙すれば、勢いその友人とも昵懇になる作品、日記、随筆に作者の友人知己が登場するから、芋づる式にそれと知りあいになること、死せる人も生ある人に変りはないこうして私は、当時の言語、風俗、人情、物価に通じ、明治初年から末年までを、彼らと共に呼吸したのである。」

 「私が兆民・中江篤介を知ったのは、幸徳秋水の紹介による。秋水は斎藤緑雨の、緑雨は内田魯庵の、魯庵は二葉亭四迷の紹介で知ったいずれも故人である私が知ったとき、すでにこの世の人ではなかったすなわち、私は死んだ人の紹介で、死んだ人を知ったのである。」

  (山本夏彦著「日常茶飯事」所収)


 因みに「徒然草」の第十三段は、「見ぬ世の人を友とする」喜びを次のように記しています。

 「ひとり燈のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる
  文は、文選のあはれなる巻々、白氏文集、老子のことば、南華の篇。この国の博士どもの書ける物も、いにしへのは、あはれなること多かり。」と。
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