「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・03・28

2005-03-28 07:00:00 | Weblog


 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「自分が無名だということは、有名になる気のない人には当り前なことだが、有名になる気のある人には残念なことである。有名になる気がない人といえば聞えはいいが、それは有名になる見込みがない人のことだと、見込みのある人は思う。」

 「芥川龍之介を認めたのが、夏目漱石であったのは何よりだった。二人は共に有名だから語り草になったのである。これが漱石でなく無名の別人だったら話にならない。無名の別人も認めただろうが、その名は残っていないから知らない。」

 「無名の人もその名をとどめたがる。」

 「新しい取巻きに取巻かれて得意にならない人はない。十年二十年取巻かれていれば別人になる。初めて推してくれた人の前でだけ、もとの無名にかえるのは困難である。」

 「天才だといった世間はすぐ忘れるが、言われた当人は忘れない。」

 「『告白』というものは多くまゆつばである自慢話の一種ではないかと私はみている。」

 「作者と作品は別もので、作品がすべてで作者はカスであることもあり、作品と作者は似ても似つかぬものであることもあって、作者を知ることは作品の理解をさまたげることが多いのである。」

  (山本夏彦著「ダメの人」所収)
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