「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

すぐ寝る・よく寝る・どこでも寝る Long Good-bye 2024・07・23

2024-07-23 05:02:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」 。

  最近読んだ 村上春樹さん ( 1949 -   ) の随筆「 村上

 朝日堂の逆襲 」( 新潮文庫 )の中に 「 国分寺・下

 高井戸コネクション 」というタイトルの小文がある 。

  その冒頭に こんな一節がある 。

 「 僕はだいたい寝つきが良い方で 、布団をかぶっ
  た次の瞬間には石のようにぐっすりと眠っている
  というタイプである 。すぐ寝る・よく寝る・ど
  こでも寝る 、というのが僕の眠りの三大特徴な
  のだが 、寝つきの悪い人にとってはそういうの
  を目にするのは少なからず不愉快なことであるら
  しい 。」

   これだけでは消化不良になりそうだから 、もう

  ちょっと引用を続けると 、

 「  僕だって自分より早く寝ちゃう人間を見ると ――
  そういうことは本当にごくごく稀にしかないのだ
  けれど ―― こいつアホじゃないかと思う 。先日
  義理の弟がうちに遊びに来て一緒に酒を飲み 、十
  一時になったので『 じゃ 、もう寝るか 』と言っ
  てそれぞれの部屋にひきあげたのだが 、ドアを閉
  めたとたんに忘れものをしたことを思いだして客間
  に戻ってみたら 、彼はもうしっかりといびきをか
  いて熟睡していた 。その間約十秒というところで
  ある 。僕だっていくらなんでも眠るのに二十秒く
  らいはかかる 。
   それでつれあいに『 あの男ほとんど脳味噌が空っ
  ぽなんじゃないかな? 』とあきれて言ったら 、
  『 あなただってだいたい同じくらいよ 』と馬鹿
  にされた 。過度に健康な人間というのは 、はた
  から見ているとたしかに馬鹿みたいである 。
  もっとも僕だって昔から終始かわることなく寝
  つきが良かったわけではなくて 、若い頃には明
  け方まで一睡もできないという時期だってあった 。
  こんな風にぐっすりとブラック・アウト的に熟睡
  できるようになったのは小説を書くようになって
  からである 。」

 「 ・・・ 、僕にだってもちろんある程度の精神的
  ストレスはある 。あまり沢山はないけれど 、ま
  ったくないわけではない 。片づけていかなくちゃ
  ならない仕事も山積しているし 、うまく話の通じ
  ない人間もいるし 、道を歩いていると車と信号が
  多すぎていらいらする 。でも僕の場合 、精神的
  ストレスと眠りとはまったくべつの独自の道を歩
  んでいるように思える 。要するに『 これはこれ 、
  あれはあれ 』という感じである 。」

 「 ・・・ 、とにかくまあそういう具合に僕の眠り
  は僕のストレスときちんと一線を画しているわけ
  である 。だから僕はぐっすりと気持ち良く眠る
  ことができる 。」

 「 夢なんてほとんど見ないし 、見たとしてもきれ
  ぎれの断片を辛うじていくつか覚えているだけで
  ある 。」

 引用おわり 。

  この小文のタイトル「 国分寺・下高井戸コネクション 」

 の由来を知りたい方は 、「 村上朝日堂の逆襲 」( 新潮

 文庫 )を買ってお読みください 。睡眠時間を削ってまで

 読むに値するかどうかは保証の限りではありません 。

 ( ´_ゝ`)

  夏の朝 まだ生ありと 目ざめけり ( 詠み人知らず )

 ( ´_ゝ`)

 

  

 

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