「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2009・08・07

2009-08-07 08:00:00 | Weblog




今日の「お気に入り」は、加島祥造さん(1923- )が訳された『タオ――老子』の第一章です。

  これが道(タオ)だと口で言ったからって、
  それは本当の道(タオ)ではない。
  これが道(タオ)だと名付けたからって、
  それは本当の道(タオ)ではない。
  なぜって、それが道(タオ)だと言ったり、
  名付けたりする君自身が、
  道(タオ)にふくまれるからだ。
  人間が名付けるすべてのものや、
  ものを知ったと思う人間たちの向こうに、
  名のない道(タオ)の領域が、はるかに広がっている。

  その名のない領域から、
  まず天と地が分かれ、
  天と地のあいだから
  数知れぬ名前がうまれてきたというわけなんだ。

  だから、この名のない領域を知るためには、
  欲を捨てなければならない。
  欲をなくすことで
  はじめて真のリアリティが見えるのだ。
  人は名のあるものに欲をおこす、そして
  名のついた表面だけしか見えなくなるのさ。

  名のない神秘の世界と、
  そこから出た数知れぬ名のあるもの――
  このふたつは、同じみなもとから出てくる。
  名がつくことと、つかぬことの違いがあるだけさ。
  名のつかぬ領域。
  それは、闇に似て、
  暗く、はるかに広がっている。
  その向こうにも、暗く、はるかに広がっている。
  その向こうにも……
  それを、宇宙の神秘と呼んでもいい。
  その神秘を分けていくとき、人は本物のいのち、
  Life Force の入り口に立つのさ。

  (加島祥造著「老子と暮らす」光文社知恵の森文庫)



  
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