「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2009・08・05

2009-08-05 08:20:00 | Weblog



 今日の「お気に入り」は、アイルランドの詩人W.B.イエーツの詩「薄明かりの中へ」(加島祥造さんの翻訳)。

  疲れた時代の疲れ果てた心よ、さあ
  善悪正邪の編み目をぬけ出て
  ここにこないか
  夜明けの光のなかで
  ふたたび笑わないか、心よ、
  朝霧のなかでまた
  深い息をしないか

  毒舌中傷の火に焼かれ
  君の希望は消え去り、愛はくずれさるとも
  君の母なる故郷はまだ若いのだ、つねに
  朝霧は輝き、薄明かりは銀色なのだ

  心よ、ここにこないか、ここでは
  丘に丘が重なり
  神秘の愛に満ちて
  陽と月と森と川が互いに
  いつくしみあっているのだ

  そして神は彼の淋しい角笛を吹き
  時代と時間はひたすら遠くへ飛び去るが
  ここでは薄明かりは愛よりも優しく
  朝霧は希望より貴重なのだ

   (加島祥造著「老子と暮らす」光文社知恵の森文庫 所収)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2009・08・03 | トップ | 2009・08・07 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事