今日の「お気に入り」。
「 いちはやくコンピューターの普及を見たアメリカで、創造性の開発がやかまし
く言われ出したのは偶然ではない。人間が、真に人間らしくあるためには、機械
の手の出ない、あるいは、出しにくいことができるようでなくてはならない。創
造性こそ、そのもっとも大きなものである。
しかし、これまで、グライダー訓練を専門にしてきた学校に、かけ声だけで、
飛行機をこしらえられるようになるわけがない。はたして創造性が教えられるも
のかどうかすら疑問である。
ただ、これからの人間は、機械やコンピューターのできない仕事をどれくらい
よくできるかによって社会的有用性に違いが出てくることははっきりしている。
どういうことが機械にはできないのか。それを見極めるのには多少の時間を要す
る。創造性といった抽象的な概念をふりまわすだけではしかたがない。
本当の人間を育てる教育ということ自体が、創造的である。教室で教えるだけ
ではない。赤ん坊にものごころをつけるなどというのは、最高度に創造的である、
つよいスポーツの選手を育てあげるコーチも創造的でなくてはならない。芸術や
学問が創造的であるのはもちろんである。セールスや商売もコンピューターでは
できないところが多い。その要素が多ければ多いほど創造的であるとしてよい。
人間らしく生きて行くことは、人間にしかできない、という点で、すぐれて創
造的、独創的である。コンピューターがあらわれて、これからの人間はどう変化
して行くであろうか。それを洞察するのは人間でなくてはできない。これこそま
さに創造的思考である。」
( 外山滋比古著 「思考の整理学」 ちくま文庫 所収 )
この書が世に出たのは、36年前の1983年3月だそうです。
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