


今日の「 お気に入り 」 。
「 のぼりつめてすこしくだれば秋の寺
啼いて鴉の 、飛んで鴉の 、おちつくところがない
暮れると寝て明けるよりあるく山また山
月夜あかるい舟がありその中で寝る
吉野橋
ふたたびはわたらない橋のながいながい風
橋があたらしくをなごやのをんなたち
朝は晴れ夕べはくもる旅から旅へ
しぐれてぬれて旅ごろもしぼつてはゆく
生きの身のいのちかなしく月澄みわたる
あなもたいなやお手手のお米こぼれます
一握の米をいただきいただいてまいにちの旅
わが手わが足われにあたたかく寝る
寒空とほく夢がちぎれてとぶやうに
遠ざかるうしろ姿の夕焼けて
ついてくる犬よおまえも宿なしか
夜の長さ夜どほし犬にほえられて
だんだん似てくる癖の 、父はもうゐない
母の第四十九回忌
たんぽぽちるやしきりにおもふ母の死のこと
( 山頭火 )」
( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )

