「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

けふはここまで Long Good-bye 2021・10・13

2021-10-13 06:36:00 | Weblog



  今日の「 お気に入り 」 。

   
   「 日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ

    ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない

    蜘蛛は網張る私は私を肯定する

    いつもつながれてほえるほかない犬です

    生えて伸びて咲いてゐる幸福

    ほんにしづかな草の生えては咲く

    誰も来てくれない蕗の佃煮を煮る

   
    ひよいと穴からとかげかよ

    
     千人風呂

    ちんぽこもおそそも湧いてあふれる湯


    ひとりひつそり竹の子竹になる

    食べる物はあつて酔ふ物もあつて雑草の雨

    炎天のはてもなく蟻の行列

    いつでも死ねる草が咲いたり実つたり

    百舌鳥のさけぶやその葉のちるや

    つくつくぼうしあまりにちかくつくつくぼうし

    何か足らないものがある落葉する

    
     郵便屋さん

    たより持つてきて熟柿たべて行く


    ともかくも生かされてはゐる雑草の中

    みんなたつしやでかぼちやの花も

    昼寝さめてどちらを見ても山

    よい宿でどちらも山で前は酒屋で

    萩がすすきがけふのみち

    さてどちらへ行かう風がふく

    けふはここまでの草鞋をぬぐ

    樹が倒れてゐる腰をかける


     木曽路三句

    飲みたい水が音たててゐた

    山ふかく蕗のとうなら咲いてゐる

    山しづかなれば笠をぬぐ


     飯田にて病む二句

    まこと山国の山ばかりなる月の

    あすはかへらうさくらちるちつてくる


    ほつと月がある東京に来てゐる

                  ( 山頭火 )」


    ( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 ) 




                     
コメント
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