今日の「 お気に入り 」 。
「 若うして或は赤い花にあこがれ 、或は 『 青い花 』を求めあるいた 。赤い花はしぼんでくづ
れた 。青い花は見つからなかつた 。そして灰色の野原がつゞいた 。
けさ 、萩にかくれて咲き残つてゐる花茗荷をふと見つけた 。人間の残忍な爪はその唯一をむ
しりとつたのである 。
葉や株のむくつけきに似もやらず 、なんとその花の清楚なことよ 。気高いかをりがあたりに
たゞようて 、私はしんとする 。
見よ 、むかうには茶の花が咲き続いてゐるではないか 。さうだつたか ―― 白い花だつたか !
萩ちればコスモス咲いてそして茶の花も 」
( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )