「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

海からの贈物 2004・12・09

2004-12-09 07:00:00 | Weblog
 今日紹介する「お気に入り」は、リンドバーグ夫人の著書「海からの贈物」(故吉田健一氏の翻訳、新潮文庫)

 の一節です。

 「人生の黎明や、40、或いは50前の壮年期に属する原始的で肉体的な、仕事本位の生き方はもう中年にはない。しかし、

 人生の午後が始まるのはそれからで、我々はそれを今までのもの凄い速度でではなしに、それまでは考えてみる暇もなかった

 知的な、また、精神的な活動に時間を割いて過すことができる。我々アメリカ人は若さとか、行動とか、具体的な成功とか

 いうものに何よりも重点を置いていて、そのためにこの人生の午後を軽視し、そんな時期が来ることなどないと決めて掛り

 さえする傾向がある。我々は時計の針を押し戻して、人生の朝を長引かせようとし、この不自然な努力に体力を使い果す。

 しかし、勿論、それに成功する訳はないので、我々は我々の子供たちと競争することはできない。……」


  人生のそれぞれのステージの良さを認めずに、息を切らせて走り続け、50歳を過ぎての「人生の午後」に初めて出会う

 もう一つの花盛りのときを取り逃がしてしまうのはつまらないことだと指摘しています。

  聡明で、洞察力に富んだ米国の女性が50年程前に書いた文章です。

  この著書の中の別のところで、著者の友人の言葉として引用されているものと、サン=テクジュぺリの言葉として引用されて

 いるものの二つも「お気に入り」に加えた言葉です。

  
   「二つとないもの(*)などはなくて、二つとない瞬間があるだけ」

    (*)著者は「二つとないもの」として、「二つとない恋愛や、相手や、母親や、安定」を挙げています。

      この世にたった一つのものなど存在しない、あるのはたった一つの瞬間だけだ。

      今、現在を大切にということを言っているのだと感じました。


   「愛というのは、互いに相手の顔を眺め合っていることなのではなくて、同じ方向に二人で一緒に眼を向けること

   なのである」
コメント
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