国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ラーメンとレコードを求めて三千里…まではいかない(神保町~新宿) 完結編

2011年09月17日 | マスターの紀行文
「もしかして、ブログやってない?」
と、唐突にジャズを生業としている専門家の方から言われて、
ボッと顔から火が出るほどに恥ずかしくなってしまった。
それまで親しくお話をしたわけでもなく、ど素人もいいところの僕の文章が
ネットを通して多くの人、いや、それほど多くはないか、
何名かの人に読まれていることを実感せざるえないということだ。

それまで何人か親しい友人には、
興味は持ってもらえないことを前提に
「ブログ、やってんだけど」という話をしたことがある。
そもそも友人の中でジャズを聴いている人はいないので、
とりあえずは小難しい名前が並んでいるのは読むのも一苦労だから
「まぁ、それなりに元気にやってます」的なメッセージを送っている程度に過ぎない。

だが、相手はジャズを聴いているとこれは話は別だ。
ジャズ歴はそこそこ年月を重ねてきて長くなってきているのだが、
肝心のジャズ耳の方はどうだろうか。
ブログを書いてみて、あとで「あぁ、やっぱり聴きが足りなかったな」と
思うことは多々ある。
アルバムやミュージシャン情報もそれなりに調べているのだが、
新たに「伝説」を創作してしまうと、「困るなぁ」という思いもある。
そんな中途半端な感じですでに3年が過ぎてしまっているのだが、
とりあえず書くことで思考をまとめていっているわけで、
それ以上に何かを求めているわけではない。

新宿最後の目的地である『HAL’S』はレコード専門店である。
そこの御主人が「もしかして…」と切り出してきたのが、
ちょうど『JAZZ Japan』の表紙をアッキーナが飾ったころだった。
たまたま僕の住んでいる地元と縁があり、
ネットで調べているときに偶然にもヒットしてしまったということだ。
「本当のジャズ喫茶かと思ったよ」
と、言われて再び顔から火の出る思いである。

最近よく『HAL’S』へよく行く。
僕は何か一つのことに専念する方が好きである。
まぁ、職人好きと言った方が分かりやすいかもしれない。
人生をかけてでも一つのことを追求し、技を磨くことで、
その人にしかない魅力が生まれる。
それはその人が生きている間しか共有することができないものであり、
偶然にも生きている時代が合致したことはこれはもう「縁」としか言えない。
思えばジャズ喫茶のマスターもその人それぞれの音を鳴らしているし、
スピーカーもアンプも、ありとあらゆる「物」が、誰かの手で生み出されているのだ。

確かに物は大量に溢れ、安価に手に入れようと思えば手に入れられる。
でも、それ以上に僕は「物」だけではなく、人の「思い」を買いたい。
若者の消費離れが嘆かれているが、
すでに若者ではない僕は「思い」に消費をしたいのだ。
『HAL’S』ではそれができる。

この日も御主人からお薦めの1枚を購入した。
ダラー・ブランドとドン・チェリー、カルロス・ワードのライブ盤である。
ドン・チェリー好きの僕もこのアルバムは知らなかった。
「連絡しようと思ってたんだよ」
僕の『HAL’S』に入ったきっかけがドン・チェリーであり、
たくさんのドン・チェリーのアルバムを売ってくれた御主人がそう言ってくれた。
貴重なアルバム以上に嬉しい言葉じゃないか。

1杯のラーメンにしても1枚のアルバムにしてもそれは人の手を介して流れていく。
単に美味しいから、単に有名だからというだけではない。
やはり根本に息づくのは人と人の「つながり」なのだ。

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