国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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エヴァンスのラスト・トリオ 最後の挑戦の幕開け

2012年08月30日 | ビル・エヴァンスについて
ブログをやっていなかった間、全くジャズを聴かなかったわけではない。
特にビル・エヴァンス関係には目を配っていて、
それなりに音源を集めていた。
特に『ライヴ・イン・ブエノスアイレス1979』が出たときは、
狂喜乱舞であった。

この音源は色々とネット上でも見かけたことがあるのだが、
どれも廃盤扱いになっていて、値段が高騰していたため
再び出ているということを知り、即購入した。

このアルバムは現在のところ
公式ではないのだがラスト・トリオでの最初のレコーディングアルバムとなっている。
1979年1月にラスト・トリオが結成され、
それから約9ヶ月後の9月にブエノスアイレスで録音されている。
2枚組がばらばらに発売されているのだが、
やはりラスト・トリオの実態を知る上で欠かすことのできないアルバムと言えよう。

ポイントは4月にエヴァンスの兄、ハリーが自殺をしている。
その訃報でエヴァンスはしばらく演奏が不可状態になり、8月にようやく復帰。
ワーナーで『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』をスタジオ録音している。
1月から4月までのトリオでの演奏音源がまだないことと、
この『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』が管楽器を入れたものであるため、
実質ブエノスアイレスのライヴがトリオの市場に出ている初音源となっているのだ。

この頃のエヴァンスはライヴでトリオだけではなく、
ソロやベースとのデュオも入れている。
ジョー・ラ・バーベラもその流れには少々の不満があったそうだ。
エヴァンスがこの1年後に演奏がほとんどできない状況になってしまうとは考えていなかっただろうが、
エヴァンス自身はキャリアのまとめに入った感のあるセットリストであると思う。
エヴァンス=トリオという考え方は一部分で、
エヴァンスはピアノでの表現力の追求を深めていっている。
それは膨大に並ぶ(時には愚作とも言われるが)音源類を聴けば分かる。

そして残っていった曲をさらに毎夜のライヴで違ったアプローチでくずしていく。
そのスタートラインに近いのがこのアルバムだろう。
エヴァンスはのっている。
1ヶ月前に失意の底から復帰していたとは思えないほどの集中力で音を紡ぐ。
それはビル・エヴァンスという人がピアノで何が残せるかに挑戦した一年の幕開けである。

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