国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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「寄付金」にまつわる話 (中)

2011年03月27日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
僕はあまりこのアルバムを聴かない。
『マイ・ファニー・バレンタイン』は、
リンカーン・センターの片割れアルバムであるが、
全体として静か系な曲でまとめられている。
それは冒頭のタイトル曲の始まりを聴けば分かるだろう。
ハービー・ハンコックがピアノを静かに鳴らし、待っていたかのようにマイルスが入る。
静けさからコンサートホールでの緊張感が伝わってくるかのようである。

アルバム全体としての構成としては
そんなわけでジャズらしいと言えばジャズらしいのかもしれない。
実際に2月12日とバレンタインデーに近いこともあり、
『マイ・ファニー・バレンタイン』と名付けられたのだという
ジャズ伝説がでっち上げられているほどこのアルバムの名前は知られている。
(スタンダード曲のためバレンタインデーは全く関係ないし、
 そもそもチャリティー・コンサートであったことを忘れてはいけない)

黄金のクインテットに進む前の段階で
テナーにジョージ・コールマンが入っているからとかいうわけではないが、
(むしろこの時の演奏でジョージ・コールマンはかなり快調だ)
どうしてこのアルバムに僕は面白さを感じることができない。

全体として長いという時間尺的な理由が一つに挙げられる。
そもそも静かな曲というのは続けざまに聴くと飽きがくる。
ジャズのアルバムは最初に勢いを付け、2曲目でその勢いを落とし、
3曲目でまた盛り上げるという形式で作られることが多かった。

確かにハービー・ハンコックが神がかったように素晴らしいソロを取っている。
思わず観客席から称賛の声と拍手が飛ぶほどだ。

全員の演奏が悪いというわけではないのだ。
だが、同じ曲調を聴いていて気持ちがフィットすれば問題はないのだが、
常にそう静かなジャズが聴きたいわけではない。

静かな曲用にまとめられてしまったことが逆に耳を遠ざけてしまったのだろう。
このアルバムにしてみるとプロデューサーのテオ・マセロの
作戦が僕にとっては立ちすぎたのだろう。
ところが対のアルバムはまた違うのだ…