国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

おそろしいまでに惹きつけられる

2010年03月17日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
『東京大学のアルバート・アイラー』
一世風靡した菊地成孔氏と大谷能生氏の共著で、
ジャズの歴史を新しい切り口から開いた本である。
内容はちょっと難しめなのだが
(2人ともミュージシャンのため遠慮無く専門用語が出てくる)
面白いのはそのタイトルだ。

東京大学はあの赤門のある天下の大学だ。
両者が組んで東京大学で講義した記録をまとめたので冠に「東京大学」が付く。
「アルバート・アイラー」?
ジャズを知っているものにとっては笑えるネタだ。

アルバート・アイラー
その名を聞いて、「あぁ、あの人か」と思い浮かぶ人はあの音までも思い出すだろう。
「ビギャー」とか「ブジャーン」とか「ギュルルル」とか
イメージとしてはフリージャズの代表選手のようなミュージシャンだ。
そいつが東京大学で流れるなんてことは普通じゃあり得ない。
天下の東大でジャズ講義があったことだって愕きだが、
そこでアルバート・アイラーという選曲をしてしまうなんて、
年季の入ったジャズ喫茶のオヤジよりもイカした選曲だ。

君もどんな音楽だろうと興味がわいてきたのではないか?
僕のオススメはアイラーの『ラスト・レコーディング』だ。
特に7曲目「スピリチュアル・リユニオン」から
8曲目の「ミュージック・イズ・ザ・ヒーリング・フォース・オブ・ザ・ユニバース」は
疲れた体に最高に染み渡る。
メリー・マリアが8曲目でじっとりする歌声を聴かせ、
そこにアイラーのぶっとくメロディアスなテナーが絡みつく。
「神聖」などといった陳腐な言葉じゃ語り尽くせないほど美しく切ない。
一口にフリーと言っても様々あるのだ。

このライブの数ヶ月後
アイラーはニューヨークのイースト・リヴァーで水死体として見つかる。
原因は未だに不明。

う~ん、何から何までおそろしく惹きつけられる。