国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

映像の中のパーカー

2010年03月12日 | マスターの独り言(日々色々なこと)
何度か取り上げているが、
ジャズには「ライブか、レコード(CD)か」という
一見するとどうでもいい命題がついて回る。
過去の名演というのは、どうしても記録媒体に頼る必要性があるが、
ライブの持つ生の感覚というのは、当たりを引ければかなり興奮する。
それはやはり聴覚だけではなく、五感全てを使って音楽を楽しめるからかもしれない。
ライブ会場の空気というのはそれだけで人の気分を変化させてしまうものなのだ。

となってくると、今はもう会うことのできないミュージシャンたちが
生でどんな演奏をしていたのか非常に興味がわいてくる。
ライブに足を運ぶことは不可能だが、耳と目を使った疑似体験はできる。
そう、映像である。

『チャーリー・パーカーの伝説』というDVDを見つけ、
あのパーカーが動いて、しかも演奏している姿が見られると知り、即購入。
たった1時間ほどの映像である。
しかもほとんどはパーカーに関する近親者や共演者のインタヴューと
ビ・バップの発声からパーカーの演奏についての説明が中心であった。
これには少々がっかりもしたが、
パーカーが生きた時代に録画技術が高かったとも思えないし、
しかも率先してパーカーを未来に残そうと考えていた人たちは
そう多くなかったことだろう。
なれば僅かながらでも動くパーカーを見られるというのは幸せかもしれない。

ディジー・ガレスピーと共演したテレビ出演の映像で
唯一パーカーが演奏している姿が見られた。
「ホット・ハウス」を演奏しているのだが、パーカーは派手に動き回るわけでもなく、
ただじっとひたすらアルトを吹く。
目だけが左右に落ち着きなく動き、
ときおり閉じてはあのクリアで太いサウンドを吹き出していく。
ディジーは頬を充分に膨らませるのだが、やはりほぼ直立不動で吹き続けている。
2人とも非常に音楽は熱いのに、演奏の姿はクールだ。
じっくりと自らの音に親しみを込め、その演奏に埋没していくかのように
自分自身の内側から音を絞り出していく。

思った以上に大柄なパーカー。
司会者にムッとしながらも冗談で切り返すパーカー。
演奏中、とてもドラッグにおぼれていた人とは思えないパーカー。
様々な側面が映像から見て取れる。
1人の偉大な男が生きた証は今でもちゃんと残っているのだ。