国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

灼熱の砂漠に一陣の風が舞う

2010年03月13日 | マスターの独り言(曲のこと)
エジプトに旅行したときカイロ周辺のピラミッドを見て回った。
有名な三大ピラミッド以外にも小規模ながら
あちこちにピラミッドがある。
カイロ市内からバスで1時間程度走った場所であろうか、
そこはもう砂漠が広がっていた。見渡す限り砂の海である。
甲子園で無念を飲んだ高校生らしく砂を持ち帰る気にもなれず、
ましてもう見飽きてきたピラミッドをじっくりと眺めるわけでもなく、
ただ広がる灼熱と簡素な黄土色の大地に見入ってしまった。
一度入れば道案内なしでは抜け出ることのできない魔の土地。
文明を離れた先に広がるのはかの有名なサハラ砂漠か。
改めてこの世界には知らない場所が多いことを実感してしまった。

そんな乾燥したサハラの風を巻き起こしたピアニストがいる。
マッコイ・タイナーである。
「あいつはただピアノをガンガン叩いているだけだ」とマイルスに言わしめた
コルトレーンの黄金カルテットの一翼である。
時代が時代であっただけに様々な楽器を持ちだして新しいサウンドを作ろうとしているのか
マイルストーンから発売された『サハラ』では、
ジャケットでタイナーが琴を抱えている。

タイナー自身に大作思考があったのかもしれない。
5曲目のタイトル曲「サハラ」は、23分にも及ぶ長い曲だ。
しかも参加ミュージシャンたちは手が空けばパーカッション、リード楽器などを演奏して
土臭いリズミカルな曲を作り上げていく。
確かにタイナーはピアノを叩きつけるだけだ。
しかも耳当たりのよいメロディーだから繰り返し聴くと飽きがくるところもある。
でも、ときおりタイナーの勢いに任せた演奏と甘いメロディーを聴きたくなる。
さぁっと乾いた風が砂を巻き上げながら砂漠を縦横無尽に音が駆けめぐる。

この4年後、
タイナーの超大作『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド』が生まれた。