【日本経済の明日を読む 2006】みずほ総合研究所
東洋経済新報社
原油価格の高騰は引き続き世界経済のリスク要因になっているが、原油高が続いてもその需要は落ちないだろうという予測がこの本にあった。
「米卸売物価指数、4か月連続で上昇…原油高の影響濃く」と数日前の新聞に紹介されていたが、影響はじわりと出ていてもその需要は落ちない。
どうやら原油価格の動向には投機的な裏事情もあることが示唆されていた。
この原油高は日本よりNIES(韓国 台湾 シンガポールなど)などアジア経済成長に翳りを作っているらしい。
アジアといえば日中関係が気になる。
靖国問題対応めぐりますます冷え込んできている中国だが対中輸出を見ると97年は11・6%が04年には19・3%になっていてこの傾向は続いているらしい。
そのなかみは資本財と生産財が中心だから反日デモはまた起っても日本商品ボイコットなどにはならない輸出事情もわかった。
中国はすでに外貨準備高では世界2位だそうだ。
これは中国が保有している外貨や金の合計額なのだから輸入代金や借入金返済などの対外支払いのための国内資産がたっぷりとあるというひとつの余裕指標なのだろう。
2008年の北京五輪をにらんでGDPは世界の7位の位置にあるという。
「世界の工場」の中国は繊維からPCなどの段階にあるそうだが、その経済インフラは脆弱のような感じも残る。
中国の経済発展、今後の市場化は、イコール民主化をもたらすことになるのだろうか、社会主義は形骸化されても全体主義的な政治路線は続き政経相克の状態は続きそうだ。
富裕層と農村社会の隔絶や中国内の需要と格差拡大などとの関連で明日の中国への突っ込んだ見方はもっと欲しかった。
目を転じれば、欧州の経済回復は緩慢とのこと。
EU加盟国は急速にいままでの自国の利害に固執しはじめ、フランスとオランダのEU憲法条約批准拒否などもあってそのEU構造改革はすすまずとの見通しがあった。
気になる米国の経済は06年の後半は減速、住宅ブームは終焉という。
かってアメリカがクシャミをすれば日本は風邪をひいて肺炎になるという時代があった。いまはどうか。
負の連鎖が今後も続くのかどうか、この本を読んでも明確な解答は得られなかった。
ただ日本株の問題で、外国人の日本株保有額は92兆円(05年 3月)と推測するなかで、世界の機関投資家と金融資産残高は5000兆円もあって、長期的に見て日本市場は割安感があり魅力的で、海外投資家のポートフォリオ全体に占める日本株のウエイトはまだまだ小さいという指摘は大変興味深かった。
ゼロ金利が解除され、景気が浮揚し日本経済の力というべき株価に対し海外機関投資家の影響は大だと思う。
その動向を考える上で 参考になった数字だ。
日本経済は設備投資、家計所得、個人消費、そろって好調で好景気は「いざなぎ」景気を超え57か月となって戦後最大級であるそうだが、その豊かな浮揚の実感がないのは、こちとらが年金生活のためか。
ただ、この本で数度紹介された企業収益ダム論には強い抵抗感が残った。
企業収益はダムの水で、水が増えればダムに水がたまって落下し、いずれ雇用と所得の増加をもたらすというものだそうだが、はたして企業収益を至上とした見通しは、そううまくいくのだろうか。
また、あれだけ騒がれた「郵貯崩壊」ももうすぐはじまるわけで、こうした経済全体への影響予測や、北朝鮮ミサイルなど地政学的リスク問題、小泉以後の経済政策の見通しなどの相互関連も十分な説明は得られなかった。
昔、「くもりガラスを 手で拭いてあなた明日が 見えますか」という「さざんかの宿」という歌があった。
明日のことは不測の事態も起りえるわけだから、見えにくく、読みにくい面もある。
だからこうした著作物はむずかしい。
その年2006年には深い関心があっても読むが、数年後には、再度手にとって読まれる本にはなりにくい。
1年後にはブックオフなどで100円単位で売られ、買われる本になってしまうかも知れないが、これはこうした本の持つ宿命のような気もする。
東洋経済新報社
原油価格の高騰は引き続き世界経済のリスク要因になっているが、原油高が続いてもその需要は落ちないだろうという予測がこの本にあった。
「米卸売物価指数、4か月連続で上昇…原油高の影響濃く」と数日前の新聞に紹介されていたが、影響はじわりと出ていてもその需要は落ちない。
どうやら原油価格の動向には投機的な裏事情もあることが示唆されていた。
この原油高は日本よりNIES(韓国 台湾 シンガポールなど)などアジア経済成長に翳りを作っているらしい。
アジアといえば日中関係が気になる。
靖国問題対応めぐりますます冷え込んできている中国だが対中輸出を見ると97年は11・6%が04年には19・3%になっていてこの傾向は続いているらしい。
そのなかみは資本財と生産財が中心だから反日デモはまた起っても日本商品ボイコットなどにはならない輸出事情もわかった。
中国はすでに外貨準備高では世界2位だそうだ。
これは中国が保有している外貨や金の合計額なのだから輸入代金や借入金返済などの対外支払いのための国内資産がたっぷりとあるというひとつの余裕指標なのだろう。
2008年の北京五輪をにらんでGDPは世界の7位の位置にあるという。
「世界の工場」の中国は繊維からPCなどの段階にあるそうだが、その経済インフラは脆弱のような感じも残る。
中国の経済発展、今後の市場化は、イコール民主化をもたらすことになるのだろうか、社会主義は形骸化されても全体主義的な政治路線は続き政経相克の状態は続きそうだ。
富裕層と農村社会の隔絶や中国内の需要と格差拡大などとの関連で明日の中国への突っ込んだ見方はもっと欲しかった。
目を転じれば、欧州の経済回復は緩慢とのこと。
EU加盟国は急速にいままでの自国の利害に固執しはじめ、フランスとオランダのEU憲法条約批准拒否などもあってそのEU構造改革はすすまずとの見通しがあった。
気になる米国の経済は06年の後半は減速、住宅ブームは終焉という。
かってアメリカがクシャミをすれば日本は風邪をひいて肺炎になるという時代があった。いまはどうか。
負の連鎖が今後も続くのかどうか、この本を読んでも明確な解答は得られなかった。
ただ日本株の問題で、外国人の日本株保有額は92兆円(05年 3月)と推測するなかで、世界の機関投資家と金融資産残高は5000兆円もあって、長期的に見て日本市場は割安感があり魅力的で、海外投資家のポートフォリオ全体に占める日本株のウエイトはまだまだ小さいという指摘は大変興味深かった。
ゼロ金利が解除され、景気が浮揚し日本経済の力というべき株価に対し海外機関投資家の影響は大だと思う。
その動向を考える上で 参考になった数字だ。
日本経済は設備投資、家計所得、個人消費、そろって好調で好景気は「いざなぎ」景気を超え57か月となって戦後最大級であるそうだが、その豊かな浮揚の実感がないのは、こちとらが年金生活のためか。
ただ、この本で数度紹介された企業収益ダム論には強い抵抗感が残った。
企業収益はダムの水で、水が増えればダムに水がたまって落下し、いずれ雇用と所得の増加をもたらすというものだそうだが、はたして企業収益を至上とした見通しは、そううまくいくのだろうか。
また、あれだけ騒がれた「郵貯崩壊」ももうすぐはじまるわけで、こうした経済全体への影響予測や、北朝鮮ミサイルなど地政学的リスク問題、小泉以後の経済政策の見通しなどの相互関連も十分な説明は得られなかった。
昔、「くもりガラスを 手で拭いてあなた明日が 見えますか」という「さざんかの宿」という歌があった。
明日のことは不測の事態も起りえるわけだから、見えにくく、読みにくい面もある。
だからこうした著作物はむずかしい。
その年2006年には深い関心があっても読むが、数年後には、再度手にとって読まれる本にはなりにくい。
1年後にはブックオフなどで100円単位で売られ、買われる本になってしまうかも知れないが、これはこうした本の持つ宿命のような気もする。
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