特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第428話 追跡・ラブホテルの目撃者!

2008年08月06日 23時43分46秒 | Weblog
脚本 山田隆司、監督 天野利彦
1985年8月14日放送

【あらすじ】
かつて短期間だけ特命課に加わっていた若手刑事・的場が、ある事件の解決に協力。久々の再会を期して、吉野と飲みに行く約束を交わす。その夜、少し遅れて約束の屋台に向かった吉野が見たものは、警官に連行される的場の姿だった。
吉野に電話を掛けに行った的場は、ラブホテルから逃げるように出てくる年の差カップルと出くわした。その背後では、少年たちが集団で男を暴行していた。仲裁に入った的場だが、警察手帳を携帯していなかったことから少年たちと乱闘になる。少年の一人が男をナイフで刺そうとしたため、慌てて少年を突き飛ばしたところ、少年は頭を強く打って負傷。少年を介抱する的場だが、少年らはおろか、的場に助けられた男まで慌てて逃走。通報を受けた警官によって、的場は暴行の現行犯として連行されたのだ。
マスコミが警官不祥事として騒ぎ立てるなか、事態を重く見た刑事局長は特命課に真相究明を託す。所轄署の厳しい取調べに不満を抱いていた的場は、旧知の仲である特命課からも同様に厳しい扱いを受け反発。神代から自宅謹慎を言い渡される。
特命課の捜査で、少年たちの喧嘩沙汰があったことは確認されるが、的場が仲裁に入った経緯を見たものはく、被害者であるはずの男の消息も不明だった。ラブホテルから出てきたカップルが目撃していることを期待し、特命課はその身許を追う。
一方、新聞で少年の意識が回復したことを知った的場は、見舞いのために病院を訪れる。だが、そこでは少年の父親が、マスコミに向かって的場を「暴力刑事」と罵り、告訴を宣言していた。激昂した的場は「酔った的場が絡んできた」と主張する少年に詰め寄るが、桜井に制止される。少年の両親は激怒するが、少年の妹だけは「ごめんなさい」と的場に頭を下げた。
特命課の懸命の捜査によってカップルが発見され、的場の正当防衛が証明される。一方、的場は得意の似顔絵を駆使して独自に男を探し出す。男を締め上げた結果、明らかになった真実。それは、男が少年の妹を暴行し、その復讐のために少年とその仲間にリンチにあっていたこと、そして警察に暴行の事実が知られることを恐れて逃走したことだった。男を殴り倒した的場は、「俺は、あんな奴のために、少年に怪我を負わせてしまったのか・・・」と激しい自己嫌悪に捕らわれる。
再び少年の病室を訪れた的場は「事情は聞いた。俺はこのことを誰にも喋らん。その代わり、お前も奴を狙うのはやめろ。今の妹さんが頼れるのは、お前だけなんだ」と少年を諭す。一方、特命課も少年の仲間たちの証言で真相を知り、証拠固めに走る。少年のもとを訪れた桜井は、的場が辞表を出したことを告げる。「当然だ」と頷く父親だが、妹は真相を語り、男を告訴することを決意。少年もまた、男を刺そうとしたことを認めるのだった。
一人特命課で的場を待っていた船村は、辞表をもって現れた的場に酒を勧める。「君は、あの兄弟をかばって辞表を出せば気が済むかもしれない。だが、君の主張を信じて必死で捜査している課長や我々の立場はどうなる?」「課長たちは、俺の言うことを信じてくれていたんですか?」「当たり前だ。そんなことは分かった上で、刑事としての厳しさを教えるために、あえて叱りつけてたんだ」神代らの真意を知ってなお、決意を翻そうとしない的場を、叱りつける船村。「甘ったれんじゃねぇよ、この野郎!刑事ってのはな、辞めるより、続ける方がずううっと難しいんだ!刑事を続けたくても続けられないような年寄りに、こんなこと言わせんな!」船村の言葉に打ちのめされるなか、刑事たちの無線が次々と入ってくる。事件解決を告げる先輩刑事たちの報告を聞きつつ、的場は自分がどれだけ刑事として恵まれた環境にいるのかを、改めて知るのだった。

【感想など】
第397話から第400話にかけて、おやっさん不在の穴埋めとして短期レギュラーを勤めた的場刑事が、一度きりの再出演を果たした一本。「同じ釜の飯を食った仲なのに、どうして俺の正当防衛を認めてくれないんですか?」という台詞に象徴される的場の甘えっぷりには、正直言って不快感を隠しきれず、課長や橘の厳しい態度には溜飲が下がる思いでした。
また、父親の態度に怒りを見せる的場に対する、「あれが俺たち警察官に対する一般市民たちの声なんだ!」という桜井の台詞が説得力に満ちているだけに、余計に的場の未熟さが際立ちます。さらに、少年を負傷させたことばかりが騒がれ、手帳をクリーニングに出して紛失するという失態がスルーされていましたが、こちらも相当の不祥事では?
とはいえ、過熱するマスコミ報道に「的場に即刻辞表を書かせたまえ」と命じる刑事局長に対し、「的場の処分は、我々の捜査が終わってからにしてください。全責任は私が取ります」と言ってのける課長をはじめ、吉野や桜井、おやっさん、そして必死で捜査に当たった橘や叶、紅林と、口では厳しいことを言いながら、的場に対して兄貴分としての優しさや思いやりを見せる特命課刑事たちの姿は非常に好感が持て、その点が今回の一番の(というか唯一の)見所ではないでしょうか。

このように、個人的には再登場を果たした的場の未熟さばかが印象に残った本編ですが、別の見方をすれば、的場の未熟さを描くことで、特命課の面々の高いプロ意識が際立っているのも事実であり、的場をことさらに「未熟者」として描いたのは、脚本上の必然であり、その意味では成功と言えるでしょう。ご存知の方も多いと思いますが、今回、初めて特捜の脚本を務めた山田隆司氏は、不朽の名作「おジャ魔女どれみ」シリーズをはじめ、児童向けアニメなどのシリーズ構成・脚本で知られています(特撮作品でも仮面ライダーBLACKやレスキューポリスシリーズなどで脚本を務めています)。初脚本ながらも各刑事たちのキャラクターを的確に把握し、退職を間近に控えたおやっさんに伏線となる言葉を吐かせるなど、後の評価をうかがわせる堅実なつくりにはなっているのもの、何と言うか、非常に優等生的なストーリー仕立てになっているのが残念。視聴者としては、先の見えた予定調和なドラマをただ追っているだけであり、特別な感慨は得られませんでした。