特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第391話 遺留品ナンバー4号の謎!

2008年03月14日 04時02分40秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 宮越澄

宮城県の寒村で一台きりの個人タクシーを営業する運転手が、客を乗せたまま失踪した。数日後、そのタクシーが都内で発見される。車内には大量の血痕が残されており、運転手が宮城から乗せてきた客に殺され、死体はどこかに遺棄されたものと見られた。
運転手の素性を調べるため、宮城に飛んだ橘。駐在は運転手が失踪した当日、隣町で起こった強盗殺人事件の捜査に駆り出されていた。強盗殺人は無事解決したが、逮捕された犯人は「自分は共犯。殺したのは足の不自由な男だ」と主張しているという。運転手はかつて東京で勤めていたが、早くに妻を亡くしたらしく、今は小学生の娘と二人暮しだった。「お父さんを探して」と頼み込む娘に、橘は事件を告げることはできなかった。
東京に戻った橘は、遺留品ナンバー4号、すなわち車内に残された犯人の靴を調査し、その靴を修理した老靴磨きを探し当てる。修理を依頼したのは女だったが、老靴磨きは「靴の持ち主は片足が不自由な男だ」と見抜く。橘は、それが隣町で起きた強盗殺人の主犯ではないかと直感。逮捕された犯人の証言から、その推理が裏付けられる。
老靴磨きの協力で、修理を依頼した女を探し出した橘たち。女の夫は行方をくらましており、強盗の前科もあることから、有力な容疑者と見られた。夫から連絡があるはずと、女を見張る橘たち。女は何者かに呼び出されて出かけるが、待ち受けていた影に殺されかける。危ういところを橘らが救出するが、女は何も語ろうとはしなかった。
そんななか、運転手の娘が父を探すべく単身上京してくる。駐在から連絡を受けた特命課は娘を保護。娘が持っていた写真を見て驚く橘。そこには運転手とともに、女が写っていた。娘は運転手の実子ではなく、女と容疑者の間に生まれた子供だった。容疑者と別れられなかった女は、自分に好意を寄せていた運転手に娘を託した。娘の所在を知った容疑者は、はじめから運転手を殺し、我が子を取り返すつもりだったのだろう。女は「娘は、あの人の子でいた方が幸せなんです!」と、娘に事実を明かさないよう頼む。
娘を宮城へと送って行った橘は、意外な事実に気づく。失踪当日、客を乗せたタクシーは、帰宅する娘を追い抜いていった。それが東京へ向かう道路とは逆方向だと気づいた橘は、運転手宅へと急ぐ。「タクシーは運転手の家に向かったんだ!車が家につく頃には、二人は互いが誰かを知ったに違いない。そして、争った末に殺した・・・」橘の推理どおり、運転手宅の納屋から死体が掘り出されるが、それは運転手ではなく、容疑者のものだった。
翌日が娘の運動会だと知った橘は、運転手が現れるはずと学校に網を張る。運動会当日、学校に娘宛の電話が入る。「どうして見に来てくれないの?」娘の叫びも虚しく、運転手は自分が生きていることを示しただけで、連絡を絶った。それでもなお、運転手を待ち続ける橘。やがて、娘の徒競走が始まる。スタート直後に転倒する娘を見て、思わず人込みから飛び出す運転手。自分と同様に転倒した友達に手を貸し、一緒にゴールする娘を見て、満足げな笑みを浮かべる運転手に、そっと近づく橘。運転手が取り落とした毛糸のマフラーを拾い上げ、「娘さんに渡しておくぞ」と囁くのだった。
そして、冬が訪れた寒村で、娘は今日も毛糸のマフラーを巻いて登校する。今もなお、父親が逮捕されたことを知らないままで。

事件の背後に隠されていた、血の繋がらない親子の愛情が胸に迫る一本ですが、サブタイトルはもう少し何とかならなかったのでしょうか?
犯人の靴が車内に残っているのが不自然極まりないことをはじめ、何で運転手が東京まで女を殺しに来たのか分からないなど、塙脚本にしては穴が多い印象があります。また、容疑者が強盗殺人の主犯であることや、運転手が生きていること、女が娘の実母であることなど、先の展開があっさり読めてしまうのも興ざめ。しかし、それでもなお、終盤の運動会のシーンでは泣かされてしまいました。
叶が橘に囁きかけた「いつか、知るときが来るんですね。父親だと思っていた運転手が、本当の父親を殺したことを」という台詞に、まず胸が締め付けられましたが、その後の徒競走で娘が転倒するシーンでは、思わず身を乗り出してしまいました。娘が友達に手を貸し、一緒にゴールくだりなど、運転手と同様に「よくぞ優しい娘に育ってくれた」と、思わず涙をこぼしてしまいました。ラストの余韻もよく、前半部分で感じた欠点など帳消しにしてくれるほど。脚本もさることながら、宮越監督の演出の勝利だと思います。
ちなみに、運転手役の北条清嗣氏といえば、第246話「魔の職務質問」での理不尽な警官の演技が、私自分の苦い経験もあいまって、半ばトラウマになっている役者さんなのですが、今回は愛すべき殺人者を好演。246話を見て「きっと実生活でも嫌な人間に違いない」と本気で思ってしまい、誠に申し訳ありませんでした。