トランプ政権は、日本に対して8月1日から25%の関税を課すと事実上の最後通牒を行っている。
トランプ大統領 “日本からの自動車輸入多い” 重ねて不満示す 2025年7月14日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250714/k10014862741000.html
25%の衝撃 トランプ関税の源流は日本 2025年7月11日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250711/k10014860301000.html
「多くの人が、外国から搾取されるのにうんざりしている。彼ら(外国)は、私たちの後ろで笑っているのだ」
いまから38年前の1987年。当時41歳で、不動産事業などを手がけていたトランプ氏は、CNNのインタビューにこう答えていました。
「その源流は1980年代の日本にある」と指摘するのは、日米関係の専門家、ダートマス大学のジェニファー・ミラー准教授です。
「多くの人々が、アメリカが外国から搾取されているのを見ることにうんざりしている。彼ら(外国)は私たちの後ろで笑っているのだ」
今月の発言かと聞き間違えてしまうようなトランプ氏の発言は、いまから38年前の1987年9月、CNNのインタビューに答えたときのもの。
ミラー准教授は、トランプ氏の主張の核心は「アメリカが数十年にわたって外国から富を奪われ続けており、関税こそが、その状況を逆転させる手段だと信じている点だ」と指摘します。
特にその標的となったのが、1980年代、製造業で世界をリードした日本でした。
トランプ大統領は、当時、「日本のような、表面上は最も親密な同盟国である国々が、実は私たちの富を奪っている。われわれは、彼らを守るために税金を払っているのに、アメリカに輸入される日本製品を見てほしい。自動車産業や電子機器の工場で職を失っているアメリカ人を見てほしい。これはばかげている」と極めて強い不満を打ち明けていました。
アメリカの自動車や鉄鋼などの産業は、日本やヨーロッパなどからの輸入拡大で衰退。「ロックフェラーセンター」などの不動産も日本の企業に次々と買収され、“不動産王”のトランプ氏にも、苦い記憶となりました。
ミラー准教授
「こうしたアメリカの衰退論は、トランプ氏の世界観の根本的な部分であり、 現在に至るまで驚くほど一貫している。
製造業がかつて支配的だった地域に住む人々、産業空洞化のプロセスから回復していない地域の人々が、トランプ氏の訴えに共鳴している。完全に正確な主張とは言えないが、この主張に共感し、真実だと感じる人々が存在することは間違いない」
トランプ氏の主張に共鳴する多くの労働者たち。その声は、私も、激戦となった去年の大統領選挙を取材する中で、数多く聞いてきました。
その1人が、大手自動車メーカーにおよそ30年勤務するクリス・ビターレさんです。ビターレさんは、自動車など製造業にこだわり続けてきたトランプ大統領を強く支持しています。
ビターレさん
「トランプ氏が、1980年代から製造業が抱える問題に懸念を抱いていたことは、YouTubeの昔のインタビューを見れば分かる。
ニューヨークの不動産開発業者のトランプ氏が、製造業に関心を持っているのは、それがどんな理由であれ、われわれを忘れていないという証拠だ。共和党や民主党のいずれの政治家たちにも、忘れ去られていると感じている人は多いと思う」
大手自動車会社勤務 クリス・ビターレさん
トランプ支持は“血の叫び”
労働者のこうした思いを“血の叫び”だと捉えるのは、ワシントンに拠点を置く投資コンサルタントの齋藤ジン氏です。ジョージ・ソロスなどの著名投資家を顧客に持ち、ベッセント財務長官とも10年来の親交があります。
投資コンサルタント 齋藤ジン氏
「トランプ大統領を支持する有権者からすれば、自分たちの製造業の仕事はなくなり続け、街が空洞化して、フェンタニルなどの薬物の中毒者も出てきている。こんな状況になるまで、誰も助けてくれなかったのが、自由貿易、グローバリズムだと考えている」
トランプ氏については「労働者には、自分たちのために闘ってくれる大統領と映っている。トランプ大統領のやり方には、多少問題があると感じてはいるが、これまで誰も闘ってくれず、放置し続けてきた」として、労働者にとって“血の叫び”になっているという見方を示します。
なぜ自動車関税でここまで隔たりが?
ことし4月に始まった日米交渉。
当初は、トランプ大統領やベッセント財務長官から前向きな発言が相次ぎ、6月中旬のG7サミットでの首脳間での合意も意識されてきました。
ベッセント財務長官と赤澤経済再生相らによる関税交渉(4月)
しかし、自動車への25%の追加関税をめぐっては日米で大きな隔たりがありました。
日本経済の屋台骨である自動車産業に甚大な影響を及ぼす25%の追加関税。日本側は、理不尽とも言える措置には断固とした姿勢を貫き、アメリカ側が自動車関税を見直さない以上、合意はできないという立場です。
また、日本はアメリカへの最大の投資国で、中でも、自動車産業は多くの雇用を生み出しています。交渉の関係者は、自動車関税の見直しとともに、鉄鋼や造船分野での協力、エネルギーの輸入拡大などを盛り込んだパッケージを示すことで、合意に達することは可能だという考えがあったといいます。
一方、アメリカ側が交渉のテーブルにあげていたのは、主に相互関税。自動車関税の見直しは、日本側の相当な譲歩がない限り考えられないという立場で、交渉は平行線をたどりました。
日本の自動車輸出に上限も?
こうした展開を予期していたのが、アメリカ政府元高官のマイケル・ビーマン氏です。USTR=アメリカ通商代表部で通商代表補として、日本、中国などとの交渉にあたってきたビーマン氏は4月下旬、NHKのインタビューで次のように述べていました。
ビーマン氏
「トランプ大統領は、日本に対し、自動車の輸出を大幅に減らすなど、自主的な措置を期待していると考えられるものの、日本にとっては、受け入れられる要求ではない。
一方、アメリカに輸入される自動車に25%の関税を課す措置をめぐって、日本が対象から除外するよう求めていることについては高いハードルがあり、非常に難しい」
USTR=アメリカ通商代表部の元高官 マイケル・ビーマン氏
この言葉を追うように、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は7月2日、アメリカのラトニック商務長官とUSTRのグリア代表が、5月下旬の日米交渉で、「早期に合意できない場合、より厳しい措置に移行する可能性がある」と警告したと報じました。
その上で「日本からアメリカに輸出できる自動車の台数に上限を設けるよう求める可能性」に言及。これに対し、日本側は、自動車への25%の追加関税を維持する場合、合意はできないという考えを改めて伝え、以降、こう着状態が続いているとしています。
日米交渉は、両国が目指していた6月中旬のサミットでも合意に至らず、トランプ大統領は、「日本は手ごわい」と発言しました。
各国に最後のチャンスも?
相互関税の期限が8月1日まで延期され、今後、日米交渉はどのような展開になっていくのか。
USTR元高官のビーマン氏は、延期の理由について、金融市場を落ち着かせるとともに、各国に最後のチャンスを与えるねらいがあるとも指摘します。
ただ、自動車分野は日本に対する貿易赤字の最も大きな要因となっているうえ、トランプ大統領にとって象徴的な問題でもあるとして、日本側が何らかの譲歩を迫られるとみています。
ビーマン氏は、交渉のテーブルに載せられる可能性として、輸出の自主的な制限などをあげています。
日本の交渉を熟知するビーマン氏は、いずれも日本にとっては受け入れがたい内容だとしたうえで、譲歩しなければ25%の関税が発動することになるだろうと指摘します。そうなれば、日本経済への打撃は避けられず、8月1日の期限までギリギリの交渉が続けられることになります。
「アメリカは外国を必要としていない」
トランプ大統領の就任以降、世界は、理不尽とも言えるその発言、関税措置に振り回され続けています。
「外国がアメリカを必要としているほど、アメリカは外国を必要としていない」
トランプ政権の取材を続ける中で印象に残っているのが、ホワイトハウスのレビット報道官のこの発言です。
ホワイトハウス レビット報道官
世界最大の経済大国が、世界最大の市場と関税を武器に自由貿易のルールを放棄し、同盟国にも刃を突きつける形です。そのアメリカとどう付き合っていくべきかは、日本だけでなくすべての国と地域が向き合う課題になっています。
トランプ大統領のねらい通りに、製造業がアメリカに回帰し、世界各国はアメリカとの新たな共生の道を見いだすのか。それとも、各国が巨大市場アメリカへの依存を減らす契機となり、アメリカ中心の世界が変わる起点となるのか。
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引用以上
NHKサイトからの長い引用だが、25%関税の本質が、1980年代のトランプの価値観が40年後の現在も引き継がれ、「アメリカの衰退は日本のせいだ」という強力な固定観念をもたらしていることがわかる。
アメリカ車が日本で売れない理由は、米国メーカーが上から目線で、自分たちの価値観を押し付けていることが理由である。
つまり、日本は左側通行で、左ハンドル車が危険であることや、アメリカ車が見せかけの威圧感ばかりに走り、燃費や運転しやすさ、小回り性能といった使い勝手に目を向けてこなかったことが、米車が売れない最大の原因だった。
いわば商品の質が劣っているので、自由経済下では排除、衰退するのは必然である。ところが、トランプは1980年代から、40年にわたって日本政府がアメリカ製品を排除していることが原因と思い込んできた。
それは、アメリカ人資本家の思想哲学に由来するもので、自分たちの傲慢な優越感を労働者や他国に押し付けてきたものだ。
例えば、1920年代のニューデール大恐慌では、ケインズが商品が売れない理由は、資本家が底辺の労働者を搾取して購買力を奪っているからだと指摘しているのに、当時の米国資本家は「労働者は貧しくさせておいて資本家に依存させなければならない」と労働者による需要を見下して奴隷のように扱っていたことで、アメリカ経済の底辺を支える労働者の需要が逼迫したことが原因だった。
ケインズは、財政投資によって社会の底辺に金が回るようにして需要を増やすことが必要だと指摘したが、資本家たちは頑なに拒み、古典経済学を持ち出して、商品の生産力、供給を増やせば、自然に購買が進み経済が回復すると信じていた。これを「セイの法則」といい、今の日本の財務省も同じだ。
だから、政府は資本家に金を注いだが、労働者は貧しいままで需要が伸びなかったので、結局、資金循環の停止による地獄経済に転落していった。
トランプの思想は、当時の資本家の姿勢と同じもので、底辺の需要を問題にするのではなく、供給体制に障害があると認識するものだ。
つまり、アメ車の商品価値、利便性に目を向けるのではなく、日本政府が、アメリカによる供給=販売を政治的に妨害していると認識し、日本を関税で痛めつけてやれば、恐怖してアメ車を受け入れるようになるとの考えだ。
そこには、アメ車の使い勝手を改善し、消費者の購買意欲、需要を増やそうとする努力は微塵も感じられないもので、資本家側の自分勝手な上から目線しかない。
売れないなら懲罰を与えれば売れるようになるのか? ありえないことだ。
そんなことをすれば、使い勝手のよい日本車を熱望しているアメリカ市民の希望を踏みにじるもので、政府に対する不信感を招き、世界経済の需要や循環性を破壊するものでしかない。
結局、25%関税は、日本の自動車メーカーの利益を完全に奪うもので、商業そのものを否定する結果になる。アメリカ自動車産業も、全世界ネットワークでの部品、材料供給に依存していて、結局、アメ車もひどく値上げせざるをえなくなり、ますます消費需要に水をかける結果しかもたらさない。
すると何が起きるかというと、日本産業界はアメリカでの販売に見切りをつけ、アメリカを外した大規模なブロック経済化に進むしかない。
トランプ政権の愚かな政策がブロック経済化を強要する結果になることは、数年前から繰り返し警告されてきた。
ブロック経済は、100年近く前に、各国が自国の保護主義を目指した結果、世界で行われたが、結局、世界戦争をもたらす結果しか生まなかった。
ブロック経済の再来?保護主義がもたらすメリットとデメリット 2025年4月28日
https://www.provej.jp/column/tr/protectionism/
ブロック経済とは、特定の国や地域で同じ経済圏を築き、他の国の商品を締め出す政策です。1930年代の世界恐慌の際、各国が自国経済を守るために採用しました。その結果、世界全体の貿易が縮小し、最終的には第二次世界大戦が勃発しました。
中略
植民地を持たない国は軍事的侵略へ
世界各国がブロック経済を展開した結果、植民地を持たない国々は深刻な経済的困難に直面しました。これを打開するため、これらの国々は植民地を拡大しようと帝国主義化しました。代表的な例がドイツ、イタリア、日本です。ドイツは東ヨーロッパへの進出を、イタリアは北アフリカや中東への拡大を目指し、日本はアジア地域への軍事的侵略によって経済の立て直しを図ろうとしました。
ブロック経済は世界大戦を引き起こした要因
イギリス、フランス、アメリカなど、植民地を持ちブロック経済を展開した国々と、ドイツ、イタリア、日本など、植民地を十分に持たない国々は強く対立するようになりました。やがてその対立は深刻化し、第二次世界大戦へと発展します。このことから、ブロック経済は世界大戦を引き起こした直接的な要因の一つと言えます。
現代においてブロック経済が注目される理由は、アメリカが自国経済を守るための保護主義的な動きが、世界恐慌後の状態と似ているためです。ここでは、当時と現代の類似点を紹介します。
トランプ米政権による相互関税政策は、1930年にフーバー米大統領が実施した農産物や工業製品への高関税政策とよく似ています。いずれも、国内産業を保護するために関税障壁を設けたためです。なお、フーバー大統領のこの政策は、世界恐慌を拡大させ世界経済のブロック化を引き起こした要因と考えられています。
トランプ米政権が世界中の国々に相互関税を課した結果、中国との間で報復関税合戦が激化しています。アメリカは中国に対して145%の関税を課し、それに対抗して中国もアメリカに125%の関税を課しました。こうした貿易摩擦の激化は、ブロック経済当時に見られた植民地を持つ国と持たない国の対立構造とよく似ています。
トランプ米大統領による相互関税政策は、重商主義に基づいていると考えられています。重商主義とは、貿易を通じて外貨を獲得し、貿易黒字によって国の富を蓄積しようとする考え方です。ブロック経済も重商主義の一例とされており、相互関税とブロック経済の根本的な考え方は似ていると言えます。
ブロック経済の最大のメリットは、自国の産業を保護できる点です。特定の国や地域が経済圏を形成し、内部での貿易を優遇することで、国外製品の競争力が低下するためです。また、新興産業や脆弱な産業にとっては、海外の安価な製品や強力な競争相手から守られることで、技術力や生産力を高める時間を確保できます。
デメリット① 貿易の減少による経済成長の鈍化
ブロック経済は自国の経済圏外との貿易を制限するため、全体の貿易量が減少します。これにより国際分業の効率が低下し、経済成長のスピードが鈍化するのです。さらに、関税の影響で輸入製品の価格が上昇し、インフレ圧力が強まることで、経済全体に負担がかかります。
デメリット② 国際摩擦の増加
ブロック経済は、国際摩擦を増加させます。なぜなら、保護主義的な政策は相手国からの報復関税や貿易制裁を招きやすく、貿易戦争へと発展するリスクが高いからです。歴史から見ても、ブロック経済は国家間の対立が激化しやすいと言えます。
デメリット③ 企業のコスト増加と競争力の低下
ブロック経済の保護主義政策は、企業のコスト増加と競争力の低下を招きます。原材料や部品の調達コストが上昇し、競争環境が緩くなることで企業のイノベーションや業務改善の動機が低下するためです。結果、長期的には国際市場での競争力が弱まり、経済全体の活力が低下する恐れがあります。
後略
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一部引用以上
ここで「重商主義」という概念が登場した。
貿易を通じて外貨を獲得し、貿易黒字によって国の富を蓄積しようとする考え方。ブロック経済も重商主義の一例とされており、相互関税とブロック経済の根本的な考え方は似ている。
トランプの経済学は、たぶん1980年代はおろか、1800年代の思想から前進していない。習近平やプーチンと同じ独裁大好きで、独裁が独善と同義語であることが理解できない。
戦前、やはり重商主義が世界を席捲し、どの国も、いくつかの国家と連盟してブロック経済圏を作ろうとした。
日本の場合は、東アジアに帝国主義的植民地圏を作ろうとした。その資金源としてアヘンやモルヒネなど麻薬密売が行われた。その中心人物は岸信介で、1940年ころ、日本は世界の流通麻薬の95%を支配していたといわれる。
太平洋戦争における日本の戦費は(現在価値に換算して)4400兆円、貧しかった戦前の日本は、どこから、この金を持ってきたの? 2020年12月08日
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827420.html
麻薬王 岸信介 2020年11月18日
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827459.html
電通と麻薬密売 2021年04月25日
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827310.html
欧米によるブロック経済圏の設定は、戦前の日本経済を閉塞させた。
当時の日本の指導者や軍部は、「大東亜共栄圏」という幻想を共有し、天皇を戴く日本は、世界の盟主になるべきと考え、台湾や朝鮮半島を領有し、さらに東アジア一帯を日本の経済ブロックにする行動を起こした。
だが、当時の日本は昭和恐慌(ニューデールの余波)によって貧しく、海外侵攻の資金がなかった。
そこで、岸信介は盟友の、里見甫らに命じて、巨大な麻薬密売産業を起こした。中核になったのが「昭和通商」で、その職員には、小泉純也や文鮮明が見える。
ちょっと文章が長くなりすぎているので、別の機会に補足するが、ブロック経済が世界を席捲すると、困り果てた国が、帝国主義的侵略や、さまざまな非道徳的な違法行為に手を出すようになり、やがて巨大戦争につながってゆくのだ。
今、中国共産党がフェンタニルを軍事的切り札に使おうとしている理由も、アメリカによる経済的圧迫とブロック経済化に焦ってのことだろう。
中国は、かつての日本のように、麻薬で世界制覇を行うとしているのだ。
トランプの思想と行動は、世界をブロック経済化に追い込み、世界戦争をもたらす必然性がある。