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精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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家族介護者の会交流会

2012年07月14日 | Weblog
7月13日午後、池田町保健福祉センター「やすらぎ」で地域の家族介護者の会、交流会が開催されました。
池田町地域包括支援センター、地元の事業所、安曇総合病院認知症疾患医療センターの共催です。

今回は40人程度の家族、介護者と10人程度の支援者の参加がありました。
長年介護されてきたベテラン、誘いを受けてはじめて参加された方、はじめて認知症をする方・・
また介護者としては配偶者、息子、娘、嫁などさまざまな立場の方が参加してくださいました。

企画として寸劇、ミニ講演、介護体験の発表、茶話会の4本立てでした。





包括や病院、事業所のスタッフが事前に2回ほどあつまって打ち合わせて、認知症がテーマの寸劇の練習もしました。
やっているうちに地元のネタなや、認知症の方と家族にありそうなセリフなど、アドリブがどんどん出てきて、脚本にとりいれられます。



認知症のおばあちゃん役の主役のIさん(ディサービス高姫所長)、上手すぎです。



カーテンコールでの役者の紹介です。
安曇総合病院の研修医も医師役で出演しました。

つづいて「ハローグッバイ!認知症」というタイトルでミニ講演。

認知症はどちらかとえば「病気と思う」、「老化の一種と思う」は半々でした・・。
死に方ではPPK(ピンピンコロリ)の心筋梗塞や巨大脳卒中が圧倒的な人気で、認知症は人気がありませんでした。
ぼけ封じ観音やぴんころ地蔵が人気なわけです。
個人的には条件がととのえば認知症も悪くはないと思いますが、その条件というのが大変です。
地域社会も文化も変わらなければいけません。

その後、認知症の姑を長年介護された、介護経験者のお話がありました。



最期にグループに分かれて、お茶やお菓子をいただきながらの交流会でした。
認知症に気づいたエピソードとか、運転をどうやめてもらったか、とか、ショートスティが1週間か1ヶ月しかダメだと言われたとか・・。

診察室とは違う形で家族介護者ののリアルな話が聞けました。

いつ終わるかもわからない介護を続けていくことは大変です。
でも、こういうところに出てこられる人はいいのでしょう。
抱えてしまっていて男性介護者などどこにも繋がっていない人が心配ですね。

もっと気軽に参加できるように定期的に開催してオランダのアルツハイマーカフェみたいになればいいとおもいました。
(スライド参照)
今後も事業所ごとの持ち回りで介護者家族の会は続けていくようですので、はじめての方も近くの日程で参加できるといいですね。

例によって寸劇のシナリオをアップしておきます。
認知症の劇のシナリオのニーズはあるようですので、もしよろしければ地元の言葉に手直ししてご自由にお使い下さい。
(左のコラムのメッセージから一言連絡をいただけると嬉しいです。)


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   認知症寸劇「新薬登場 ボケ封じの薬の巻。」

母:(ウメさん)認知症をかかえるおばあちゃん。
嫁(サツキさん):認知症なのだからと何もさせない嫁
娘(ノブコさん):認知症の母を受け入れられずサプリメントや脳トレをさす。
息子(ヒロシ):やや無関心な息子。
医師:普通レベルの医師
上條さん:ディサービスのスタッフ

「だんだんだだーん、ボケていく、だんだんだだだーん忘れてく。八十代の忘れにボケボケ、お医者さんに相談だ・・・。」

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嫁:「ぼけてしまえば本人は楽だけど、まわりは大変よねぇ。ひとさまには迷惑をかけたくないわ・・・。ピンピンコロリと逝きたいわね。」

娘:「みじめだわ。認知症にはなりたくないね。」

息子:「「認知症の新しい治療が始まっています」というCMをやっていたね。認知症は薬で治るようになったのかい?」

さぁ~?・・ガヤガヤ・・。

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ナレーション:膝の手術のために安曇総合病院に入院したおばあちゃん。慣れない入院で夜になって混乱してしまいました。

母:「ここはどこだい。たすけてくれ~。こんなところに閉じ込めて。何するだい!」

診察や検査、頭部CTなどの結果、アルツハイマー型認知症と診断されました。

医師:「アルツハイマー型の認知症が疑われますね。」

嫁:「やっぱり。お義母さん、最近、迷って帰れなくなったり、同じ物を何回も買ってきたりしてどうも様子がおかしいと思っていたのよ。」

息子:「あの、アルツハイマー・・・ってどういう病気なんですか?」

医師:「脳が徐々にやせていく高齢には比較的ありふれた病気です。物忘れなどの症状がすすみ、日常の生活が困難となってきます。」

息子:「入院したことで認知症になってしまったのですか?」

医師「いいえ、もともと認知症が徐々にすすんできていて、新しいことを覚えたり、ここはどこかをなどを認識する能力が低下していたところに、入院して混乱したのだと思います。」

嫁:「先生、それは治す方法はあるのですか?」

医師:「現在でも症状の進行を多少遅らせる可能性のある薬はあります。
しかし大切なのは周囲の人の理解と支援です。それがないと本人は混乱し不安定になります。認知症をかかえる人の気持ちを理解することと、歩くのが大変になったら車椅子や杖が必要なように、認知力が低下して難しくなっていくことに対しての支援が必要ですね。地域に増えてきた様々なサポートも活用するのがいいでしょう。」

息子:「・・まぁ、おばあちゃんも歳だし、そんなもんでしょうね・・・。いいほうじゃないのか。」

嫁:「お義母さん、認知症なんですって。もう一人で出かけないでくださいね。」

母:「そうかなぁ・・。」
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ナレーション:しばらくして。おばあちゃんは離れて暮らす娘とともに外来を受診しました。
(先生・・・こんにちは)
娘:「お義姉さんところでは、認知症だからって何もさせてもらえないようなんです。あんなところにいたら母がまいってしまいます。なるべく私のうちに来て過ごしてもらうつもりです。」

母:「私は大丈夫。自分のことは自分が一番良くわかっているんだからね。」

娘:「うちに来ているときのお母さんの表情は違います。きっと認知症なんかじゃなかったのよ・・・。私が用意した脳トレのドリルだって毎日楽しんでやっていますし・・・。この縫い物も母が作ったんです。治ったんでしょうか。」

医師:「うーん。そうですね。役割を持って楽しんでやれるならいいと思います。」

娘、「そういえば、認知症の新しい治療があるっていうじゃないですか・・。一番いい薬をください。とにかく母の認知症をすすめないためには、なんでもさせますから。」

医師:「そうですね認知症の薬として、日本では長らく一種類の薬しかありませんでしたが、昨年から使える薬が少し増えました。」

娘:「それはどんな効果があるのですか?」

医師:「残念ながら今使える薬はどれも根本的に治したり進行を止めたりするわけではありません。効き方にも個人差がありますし・・。
効く人には脳を活性化して症状の進行を半年~2年くらい遅らせる効果くらいですかね。ただ副作用として下痢や吐き気などのお腹の症状がでることがありますし、徘徊や怒りっぽさなどの症状をあおってしまうこともあるので注意して使わなければいけません。」

娘:「そうですか。」

医師:「薬は上手に使えば、いい時間をつくるのに役に立ちます。でも認知症に関する理解と支援も大事です。一緒に考えていきましょう。」

母:「ボケ封じの薬、飲んでみます。」

ナレーション:しかし認知症は徐々に進行し、さまざまなことが困難になってきました。ある日おばあちゃんが洗濯をたたんでいると・・・。
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嫁:「ただいま~。仕事から帰って来ましたよ・・・。あっ、お義母さん、それは私がしますから、休んでいてくださいよ。」

母:「サツキさんが忙しい忙しいっていうから手伝おうと思ってやっているじゃないかね、なにいっているかい・・。」

嫁「お義母さん、いつも膝が痛いって困っているじゃないですか・・・。ん、ちょっとあら、何の匂いかしら、焦げ臭いにおいがするじゃない。」

母「そうかい、におうかい?」
嫁、「お、お義母さん、大変、鍋が焦げているじゃない!火事になる寸前でしたよ。
   もう、お義母さん、火をつかうことは二度としないで下さい!」

息子「なんだいまた喧嘩しているだかい。」

母:しら~。

ナレーション:次々とこのような困ったことがおこって来ました。
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娘:「薬も飲んでいるのに、もの忘れが進んでいます。新聞の一面の下の本で紹介されていた偉い医学博士の先生やっている東京のクリニックまで連れて行って診てもらいました。
赤身肉とバナナを食べて運動して、サプリメントを飲めば脳の傷が治るって・・。でも、すごく高いんです。この薬・・。先生のところで出してもらえますか?」

医師:「うーん、それは普通に食事をしていたら十分とれるビタミンですね・・・。」

母:「なんだい?なんだって・・・?」(戸惑った様子)
 
娘:「とにかく、これ以上もの忘れがすすんだらうちで暮らせなくなります。他に薬はないんですか!」

医師:「うーん。今飲んでいる薬の組み合わせがめいいっぱいです。」

娘:「お母さんちゃんと薬を飲んで、脳トレのドリルも毎日やりましょうね。」

嫁:「今日は長く時間がかかったわね・・。おまんじゅうかって帰りましょう。・・病院にくるのが大変だから、家まで先生が来てくれればいいのに・・・。」

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嫁:「。今日はおとなしくしてましたか?お母さん、なんにもしなくていいですからね。さて、私は買い物に行ってくるからお留守番していてくださいね。」

母:「おとうさん~。みんながいじめるだ。早くお父さんのいる西の国に行きたい。薬はのみたくないだ。毒をのませようとするだよ~。」

ナレーション:おばあちゃんはいたたまれなくなり家から出ていってしまいました。

母:「家に帰るからね、あたしゃ・・!」

(・・・出ていってしまう。)

嫁「あら、おばあちゃんがまたいない。あ、ノブコさん、お母さんが見当たらないのよ・・。」
娘「おばあちゃーん。どこへいったの・・。」
嫁「おばあちゃん、帰ってきて下さい~。」
息子「ばば、どこ行ったんだ・・・。警察に連絡しなきゃだめかな・・。」
(しばらくウロウロする)
(・・・・ディケアのスタッフとともにニコニコして帰ってくる。)

娘、嫁「あ、いた、よかった・・・。」
嫁:「あ、高姫の上条さんじゃない。」

ディスタッフ「ウメさんをディサービスの送迎の途中でお見かけして・・・
庭の畑の収穫も手伝ってくれたり、子どもと遊んでくれたり。
とっても助かったんですよ。サツキさんのお手伝いをしたいと話を伺っていました。」
母:「ほら、お茶出してあげて・・・。」

嫁「そうだったのね、おかあさん、出来ることだってたくさんあるのに、役割を全部奪ってしまってごめんなさい。」
娘:「認知症になったお母さんを受け入れられなくて、頑張らせてしまってごめんなさい。」

母:「どうにかこうにか若い時のようにやれりゃあいいだがね。私くらいの歳になればサツキさんものぶこさんもわかると思うよ。」

息子「母さん・・。わるかったよ。認知症だからってお母さんはお母さんなんだよな。みんなの力を借りながら支えていくから・・・。」
上條さん:「また、うちのディサービスに来ていろいろ手伝って下さい。」
嫁:「あら、先生もきてくださって・・・。」
(ガヤガヤ・・・)
医師:「良かったですね・・・。」
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その後のおばあちゃん。認知症は少しずつ進行していますが、みんなの力を借りて、ディサービスなども利用して楽しく穏やかに過ごされています。


これまでの寸劇。

「どうなる!どうする?認知症」の寸劇。


どうなる!どうする!認知症 再び