リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
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「続・日々コウジ中」出てました。

2011年12月25日 | Weblog
以前このブログでも紹介した日々コウジ中の続編が出版された。

続・日々コウジ中―高次機能障害の夫と暮らす日常コミック
柴本 礼
主婦の友社


昨今、ドラマや映画化もされた「ツレがうつになりまして」を嚆矢として、障害や病気とともにある生活を描いたコミックエッセイが増えている。
統合失調症に関しては「私の母はビョーキです」という名著もある。
アルコール依存症に関しては西原理恵子さんの本がおすすめだ。
どの本も本人の大変さとともに家族や周囲の人の苦労や、問題提起などが含まれている。
どの本も活字の本よりも読みやすく多くの人にリーチができ、当事者か家族、それ以外の人にも役に立ち病気や障害の理解を広めることに役だっている。

前作はくも膜下出血で入院し高次脳機能障害と診断を受けてからの家族の混乱、それから復職にいたる様子の様子が主な内容であったが、続編では、出版後のこと、ブログを通じて知り合ったいろんなケースのこと、行政や医療への提言などの内容が主である。
この本の中で特に参考になるのが、著者がブログなどを通じて知り合った「私が出会ったコウジな人々」のコーナーであり、障害も家族や周囲の有り様も様々なことがわかる。
同様のコミックエッセイの中で、この本の出来は素晴らしいのは、著者や家族だけではなく、専門家や家族会、ブログを通じて知り合った他の当事者、テレビや出版業界の人との共同作業でつくられているからだろう。

えらぶって、あえてギョーカイ流行りの小難しい言葉を使わせてもらうと

「就労のチャンスを!」「就労は見切り発車でOK」などはまさにIPS(Individual Placement and Support)の考え方である。
「家族や当事者会の役割」はセルフヘルプグループや、ピアサポートの考え方。
「頑張るコウジさん」「優しいコウジさん」などはストレングスの視点。
「人と人とのつながり」「オープンにして周りに情報を発信していくこと」「コウジさんは福の神」はリカバリーの視点、そして弱さを絆につながることである。

著者は「コウジさんが就労できたの理由はズバリ「人柄」だったとおもう。」と振り返り、「障害者の皆さんいまからでも遅くはありません、人柄磨きをしましょう」と講演会で訴えているそうだが、それはなかなか難しいことなのではないかと思う。
周囲が本人のストレングスに注目し、理解し支える環境があってこそリカバリーが得られ、本人の良い面が引き出される。
もとキャラもあるだろうがコウジさんが投げやりになっていじけずに(モラールが低下せずに)良い人柄でいられたのも、家族や職場を始めとした周囲の多大な理解があり、また上司と妻がメールで連絡を取りコーチの役を丁寧につづけるなどして、本人のプライドを尊重しつつも粘りづよくできることを探していったからであろう。

著者はこれらの経験を活かし障害者が生きやすい社会を目指してブログや家族会、講演会などを通じて積極的に活動されている。
長野県にも平成23年11月19日に伊那で講演をされており私も参加したかったが時間が作れずに残念だった。

この本は高次脳機能障害についてはもちろん、あらゆる病気や障害に当てはまる普遍的な内容や提言が優しい言葉とイラストで語られており、障害の種類にかかわらず当事者、家族当事者、支援者、それから一般の人も含め誰もに読んでもらいたいと思う。


著者のブログ→
日々コウジ中 - クモ膜下出血により、さまざまな脳の機能不全を抱える“高次脳機能障害”になったコウジさんを支える家族の泣き笑いの日々

日々コウジ中(高次脳機能障害の夫と暮らす日常コミック)
高次脳機能障害専門セミナー(松本)