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地球温暖化による「気候変動」の脅威/奈良新聞「明風清音」第30回

2019年11月23日 | 明風清音(奈良新聞)
私はかつて勤務先で環境ISO(ISO14001)をベースとした「エコ・オフィス活動」を担当していた。CO2の排出削減などに取り組み、地球温暖化・気候変動に対処しようという活動である。今でいうESG(環境・社会・ガバナンス)とかSDGs(エスディージーズ 持続可能な開発目標)につながる取り組みだった。

地球温暖化については国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書などで明白なのに、日本では武田邦彦氏、竹田恒泰氏、池田信夫氏、池田靖彦氏、渡辺正氏などが懐疑論を唱えているのが不思議だ。地球温暖化による気候変動により、最近の巨大台風の来襲、夏の猛暑・冬の酷寒(しかも春と秋が極端に短い)、海流の変化(漁獲量や魚種の変化)など、随所に影響が現れているにも関わらず…。

そこに彗星のように現れたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの言動には、注目している。いつかノーベル賞をとってほしいものである。11月21日付の「明風清音」(奈良新聞)では《「大量絶滅」の始まり》のタイトルでそんな話を書いた。以下に全文を紹介する。

今月、海の向こうからトンでもないニュースが飛び込んできた。本紙11月6日付の「米、パリ協定離脱通告 大統領選の争点へ」によると《トランプ米政権は4日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると国連に正式に通告した》《米国は中国に次ぐ世界2位の温室効果ガス排出大国。温暖化と関連するとみられる異常気象が世界各地を襲い、対策強化の必要性が叫ばれる中、パリ協定が本格始動する20年を目前にした離脱強行は改めて国際的な非難を呼びそうだ》。

「気候変動のような大規模の問題に取り組む際には楽しく、格好良く、セクシーでなければならない」という意味不明の発言でヒンシュクをかった小泉進次郎環境相は同記事で《5日の閣議後の記者会見で「脱炭素社会の実現は喫緊の課題で、離脱の通告は極めて残念だ。トランプ大統領に本意を促しても不可能だと思う」と述べた》。

なお小泉氏は以前、米国のステーキ店で記者団に「毎日でも牛肉を食べたい」と発言して反発をくらったが、この意味を理解していない人は案外多い。

牛を育てる過程で多くの「げっぷ」や「オナラ」が発生する。これらにはCO2の25倍の温室効果をもつメタンが含まれ、それは世界の温室効果ガス排出量の約16%を占める。そのほか飼料となる「穀物」を育てる過程で大きな環境負荷がかかる(窒素肥料はCO2の300倍もの温室効果をもつ亜酸化窒素を生成する、農機がCO2を排出するなど)、「排泄物」が土壌や地下水・河川を汚染する、放牧のため「熱帯雨林」が伐採されるなど、枚挙にいとまがない。

大人がこんな情けない状況なのに、頑張っている女子高生がいる。スウェーデンの環境活動家・グレタ・トゥーンベリ(16)さんだ。まるで「王様は裸だ」と喝破した子どものように、曇りない目で地球環境問題を見つめている(さすがに彼女は肉を食べない)。彼女の発言で特に印象的だったのが9月の国連の温暖化対策サミットでの演説だ。「生態系全体が崩壊しつつあります。私たちは大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなたたちが話すことはお金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり、よくもまあ」。

「大量絶滅」とは、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅することで、これまで規模の大きなものが5回あったとされる(ビッグファイブ)。「地球温暖化で大量絶滅が始まる」と言われてもピンとこないかも知れないが、海外では地球温暖化ではなく「気候変動」と呼ばれることが多い。

日本でも最近の巨大台風や竜巻の発生、春と秋が短く夏は猛暑・冬は酷寒、植生や海流の変化などにその影響が現れている。しかし、トゥーンベリさんを非難したり、いまだに「ヒートアイランド現象に過ぎない」などといった懐疑論を唱える大人は日本にも多い。トランプ大統領のことを笑ってばかりもいられない。

温暖化・気候変動の問題は、世代間の不公平が多い問題だと言われる。問題が深刻になるのは2050年といわれ、今の老人が退場し、若い世代が大人になった頃だからだ。今こそ大人はトゥーンベリさんの声に真摯(しんし)に耳を傾け、「セクシー」ではなく「シリアス」(真面目)に行動しなければならない。



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