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田中利典師の「地震封じ、被災地救済、物故者追悼」の祈り

2023年05月25日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「大震災の祈り」(師のブログ 2011.7.25 付)だ。金峯山時報「蔵王清風」欄に寄稿された文章である。東日本大震災から、約130日経過した頃の話だ。師は震災の翌日から、震災の起きた午後2時46分に毎日、般若心経を唱えておられる。奥駈修行中でも、見舞い中の病院でも、高速道路のPAでも、必ず祈りを捧げておられる。
※トップ写真は、吉野水分(みくまり)神社(2023.3.31 撮影)

祈りの最中には〈大津波に街が飲み込まれる映像がフラッシュバックで甦り、心が乱れてならない。しかし蔵王堂でのお勤めの時だけは、大きな力で守られているような気持ちが生まれ、心の乱れは起きないのである。天地の揺らぎを鎮め、天魔の障りを打ち砕く蔵王権現様のご威力に包まれているからに違いない〉という。では、以下に全文を紹介する。

大震災の祈り
機関誌に書いている随筆から・・・


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「大震災の祈り」
3月11日の東日本を襲った大震災以来、130日を越える。金峯山寺では義援金の供出のほか、2度にわたって現地への見舞い巡回活動を行った。しかし、実は私自身はまだ被災地に行けないでいる。ただお祈りを続けているのみでなのである。

お祈りは大震災の翌日から行っている。折しも私自身が長く関わった全日本仏教青年会からの提案で、震災の起きた午後2時46分に、地震封じ・被災地救済・被災物故者追悼のため、全国の寺院で同時刻にお祈りを行うという運動も始まり、金峯山寺でも朝夕の勤行や長日護摩での祈願とともに、2時46分のお祈りをはじめることとなった。蔵王堂では同時刻になると、梵鐘が鳴り響く。

私も同時刻のお祈りを毎日行っている。本山にいるときは蔵王堂の御宝前で、外に出ていてもその時間にはどこにいても必ず般若心経一巻を被災地のためにお唱えしている。東京の大手町の地下鉄入口や、母の見舞いの病院、自坊、高速道路のPA、会議中を抜け出して…など、今までいろんな場所で行った。

奥駈中、ちょうどその時刻が弥山への胸突き八丁登拝の最中だったので、行者一同で東北に向かい般若心経をお唱えしたりもした。時刻が時刻なだけに、なかなか時間を合わせるのは難しいのだが、私の携帯電話は15分前と、2分前にアラームを設定していて時刻を知らせてくれるので、ほとんど忘れたことがない。

そんな風にいろんな場所でお祈りをしているが、一番落ち着くのは蔵王堂でのお勤めである。あの時刻のお祈りは、目を閉じると、テレビなどで何度も見せられた大津波に街が飲み込まれる映像がフラッシュバックで甦り、心が乱れてならない。

しかし蔵王堂でのお勤めの時だけは、大きな力で守られているような気持ちが生まれ、心の乱れは起きないのである。天地の揺らぎを鎮め、天魔の障りを打ち砕く蔵王権現様のご威力に包まれているからに違いない。

普段私たちは願主の願いに応じて、家内安全や身体健康、当病平癒、商売繁盛などなどたくさんのご祈願を行じている。いわゆる祈願専職の僧侶だが、まさに国難ともいえるこんなときに、国土の平穏と人々の救済を祈らなくて、いつ祈るというのか。

大地の揺らぎと、これ以上の被害の拡大を防ぐこと、そして災害によって奪われた多くの方々の慰霊をご本尊に祈ることこそが、まず私が出来る働きだと思って、日々祈りを行じさせていただいている。是非、この祈りが更に大きく広がることを念じてやまない。

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今日この毎日の祈りが大きなイベントに繋がることになった。「ア・センス・オブ ホーム」の上映会である。詳しくは後ほど。
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