tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

隠れ観光スポットを掘り起こそう!(奈良新聞「明風清音」第13回)

2019年01月07日 | 明風清音(奈良新聞)
奈良新聞「明風清音」欄に月1回程度(原則として第3水曜日)、寄稿している。前回(12/19付)掲載されたのは《「遺産過多」「古代妄想」》。奈良県民の先入観や固定観念を指摘した知人の言葉を紹介した。
※トップ写真は野迫川村の雲海、村のホームページから拝借した

また別の知人は、中国人観光客がリピーターとして再び日本に来るときは「鹿と大仏」ではなく「隠れ観光スポットに行く」と指摘した。これらは今後の奈良県観光を考えるヒントになるのではないかと思い、紹介したものだ。まずは全文を貼りつけておく。

長らく県内の大学で教鞭をとっていた知人から、興味深い話を聞いた。「鉄田さん、奈良は2つの病気にかかっていますね。1つは胃酸過多ならぬ『遺産過多』、もう1つは誇大妄想ならぬ『古代妄想』です」。これは鋭い指摘である。

県内にはたくさんの文化遺産がある。これらはすべて、観光資源として活用できるシーズ(種)といっていい。奈良県はユネスコの世界文化遺産の数では1位、国宝と重要文化財の総数では3位、国宝建造物では堂々の1位。しかしその数が多すぎて感覚がマヒし、観光資源としての活用がなされていない。これはとてももったいないことである。

 国宝消滅
 デービッド・アトキンソン
 東洋経済新報社

そもそも日本では文化遺産の活用が不十分だとデービッド・アトキンソン氏は警鐘を鳴らす。「日本の伝統文化を守り、将来の日本人に受け継ぐためにも、日本文化を世界へと発信することで『観光立国』を実現し、人口激減に苦しむ日本のGDPに貢献するためにも、『文化財』というものを『空間の体感』ができる場所に変えていかなければならない」(『国宝消滅』東洋経済新報社刊)。そのため学芸員の意識改革の必要性などを説いている。

こんな事例も紹介されていた。「先日、岐阜城への視察に同行しました。立派な甲冑や火縄銃など、展示物はかなり充実していましたが、立派な火縄銃についた英語の解説は、『GUN』と記されているだけです。他の文化財で見た兜も、『HELMET』と記されているだけで、それ以上、何の解説もされていませんでした。日本文化を知りたいと訪れた外国人観光客にとって、この説明はかなり物足りないというか、がっかりしてしまうのではないでしょうか」(同書)。

見れば銃であることやヘルメットであることは分かる。そこからの突っ込んだ説明が必要で、そうしない限り「文化」が伝わらない。このような事例は、残念ながら県内でも散見する。

「古代妄想」とは「奈良には古代(飛鳥~平安時代)しか売り物がない」という先入観のことをいう。これもおかしい話で、奈良県には中世も近世も近・現代もある。南北朝もあれば中世から続く今井町、幕末の天誅組(天忠組)の変もある。

ベストセラーとなった呉座勇一著『応仁の乱』(中公新書)は、奈良の話が中心だった。今も書店では、奈良県の再設置運動に立ち上がった今村勤三を描いた植松三十里著『大和維新』(新潮社刊)が平積みされている。「奈良には古代しかない」というのは、単に不勉強なだけである。

ひっくるめて言えば、県内には長い時代の多くの観光資源が眠っているが、それらを発掘して編集し演出しPRする力が足りない。今後、観光立県として奈良県がさらに飛躍するためには、編集力・演出力・広報力が求められる。

先日、中国に住んでいる日本人医師からこんな話を聞いた。「今、中国から奈良に旅行して鹿にせんべいをあげているのは旅行初心者です。これからは何度も日本に足を運ぶことでしょう。彼らリピーターは、隠れ名所を探します。それに対応できれば、奈良はコアでディープな観光地として注目を集めることでしょう」。

年末回顧というわけではないが、知られざる奈良の魅力を発信することで、観光立県を実現したいものである。


奈良県内にはたくさんの観光のシーズ(種)や優れた人材が埋まっている。先入観や固定観念を廃してそれらを掘り起こし「稼げる観光」とするため、1月29日(火)には初のワークショップ形式(体験型講座)で「第11回 観光力創造塾」を開催する。テーマは「地域のお宝掘り起こし塾~観光資源・チャレンジャーをビジネスに~」で、参加無料・要申し込み。定員が50人なので「抽選制」となる。特に若い人たちにたくさん来ていただきたい講座である。たくさんのお申し込みをお待ちしています!

コメント (2)
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