tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

極楽とんぼ

2006年07月23日 | 日々是雑感
「極楽のイメージは」と聞かれて思い浮かぶのは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のこんなシーンだ。

「御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊(しべ)からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります」

後年、「極楽にいるのは釈迦ではなく、阿弥陀仏だ」と教えられた。仏教的にはそれが正しいのだろうが、この小説では、やはりお釈迦さまの方がピッタリくる。

梅雨の晴れ間となった昨日(7/22)、京都府精華町の「花空間 けいはんな」(旧・京都フラワーセンター)へ行ってきた。「観覧温室」の熱帯植物も見事だったが、今の時期は「水生花園」だ。色とりどりのハスが池一杯に咲いていた。とんぼやチョウが舞い、まるで極楽の情景だ。蜘蛛の糸まで、ちゃんとあった。

色鮮やかな赤とんぼが飛んできたので、しばらく後を追ってみた。チョウやハナムグリが蜜を吸うために花から花へ渡るのに比べ、とんぼはとにかく長いものの尖端に止まり、ボーッとしている(ように見える)。獲物になる虫を大きな目で探しているのだろうが、見た目は極楽とんぼの形容そのものだ。

それにしても、見事な蓮池だった。池の一面に蓮が咲き、京の風にゆらゆら揺れている。ふと拉致被害者の「蓮池薫」さんや、お兄さんの「蓮池透」さんを思い出し、今更ながら、良いお名前を付けられたものだと感心した。

帰り際、ギラギラ照りつける太陽の下、長靴をはいて池の中に入り、枯れかけたスイレンの葉を1本1本抜いている係のおじさんを目にした。こんなご苦労があってこそ美しい植物園が保たれるのだな、と感謝の気持ちで一杯になった。
コメント
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