映画「新聞記者」を見てきた。
リアルな怖さに映画館の中が静まりかえった映画だった。
東京新聞の望月衣塑子記者の書いた本をもとにしたフィクションだそうだが、
望月記者や前川喜平さんが話している番組とか、
レイプ事件の会見の映像とかをそのまま流してるので、
ドキュメンタリー、ノンフィクションみたい。
ドラマとしては、松坂桃李の官僚・杉原と、
シム・ウンギョン(韓国の女優)の新聞記者・吉岡の二人を軸にして、
個人が、大きな組織の力に対抗して、正しい行いができるかという話だが、
政権にかかわる「まずいこと」をいかに隠蔽し、
相手方を攻撃して参らせるかと日々働いている、
「内閣情報調査室」の内部が描かれていて、驚愕する。
広い部屋にずらっと並んだパソコンの前で、大勢の公務員が取り組んでいるのは、
政権批判したり、「総理のお友達」にとって不利益だったりする者を、
ネット上で攻撃する書き込み。
さも普通の人々が自分の意見を書き込んでいるかのように。
さらに上司が「与党ネットサポーターにも拡散させるように指示しろ」と言ったり。
上司の多田を演じているのは田中哲司。
新聞記者にも部下にも、圧力かけまくり。
「すべては政権を守るため」
決して、国のため(イコール国民のため)ではない。
この田中哲司が怖いのよ。
吉岡の父は、彼女が高校生のとき、自殺している。
敏腕新聞記者だった父は、時の政権の不正を暴く記事を出し、
それが「誤報」だったというミスによって追い詰められて、
首を吊って死んだことになっている。
吉岡がいよいよ、大学新設に隠された計画を暴く記事を出すという時に、
多田が電話をかけてきて、わざわざ言ったのだ、
「あれは誤報じゃなかったんですよ。あれは誤報じゃなかった。
お父さんは残念なことをしましたね」と。
つまり、父親は自殺じゃない、「内調」が手先に殺させたのだ。
この電話は、おまえも同じ目に遭うぞという脅し。
杉原は、子供が生まれたばかり。
尊敬していた先輩官僚(高橋和也)が自殺した原因が、
この大学新設の事案に関係していることを知り、吉岡に協力して情報をリークした。
最終的には、自分の名前を報道してもよいとまで覚悟を決めていたのだが、
多田に「出産祝いだ」と祝儀袋を差し出され、
「撤回するのは恥ではないぞ」と言われる。
このシーンも怖かった。
つまり、生まれたばかりの子供と妻が大事だろう?という脅しだ。
杉原はうつむいて受け取り「ありがとうございます」と言うのがやっと。
ラストは、大学新設問題のスクープを出し、
それを潰す「内調」と官邸の動きに対して、
実名を出してよいと言った杉原の約束を実行していいか?という、
ギリギリの選択。
官庁から外の通りに出てきた杉原と、駆け付けてきた吉岡が、
横断歩道を挟んで、顔を合わせる。
ここの松坂桃李の演技がすごかった。
正しいと思う行動か、自分や家族を守るために隠蔽に加担するか、
どちらを選ぶのか。
松坂の土気色の顔のアップ、ぶるぶる震える唇。
かすかに唇が動いたのは、何を言おうとしたのか?
それを見た吉岡の顔がハッとした。
その瞬間、バサッと真っ暗になった暗転で、映画が終わった。
このラストシーンは、見てて、呼吸が止まっていました。
28日には「凪待ち」30日にはこの「新聞記者」と、
両方とも東京のテレビ局ではまったく宣伝させてもらえない映画。
片方はジャニーズ事務所、片方は安倍政権、
テレビ局は圧力に弱すぎ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます