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「當世流小栗判官」七月大歌舞伎

2022-07-14 22:23:39 | 見る
「當世流小栗判官」七月大歌舞伎


七月の歌舞伎座第一部は猿之助一座の「小栗判官」
休憩挟んで二幕、約2時間という上演時間、すっごく短くしてて驚いた。見るのには楽でしたけど、ほぼダイジェストみたいではあるかも。

説教節の小栗判官・照手姫物語をもとにしてるから、因縁、たたり、血みどろからの熊野信仰の奇跡という波乱万丈の物語で、見せ場もいろんな種類がある。
馬術の名手である小栗判官が暴れ馬を乗りこなして、碁盤の上に立ち上がる(ナポレオンの肖像画状態)馬の見せ場は楽しい。馬の足というけど、歌舞伎の馬の足はたいていとても大変。このお芝居の馬も、主役の動きに合わせて動き、浄瑠璃のテンポに乗って踊り、前足(の人)を持ち上げたり、後ろ足(の人)を持ち上げたり、芝居心が必要な重労働。いつも思うんですよね、馬の足に入ってる大部屋の役者さんの名前を配役に載せてほしい。

悪者にさらわれた照手姫が乗せられた舟が堅田から琵琶湖に漕ぎ出していき、追ってきた忠義な浪七が、自分の命を投げ出して舟を呼び返すシーン。あらすじを先に読んでおかないと、意味がわからないよね。浪七は切腹してはらわたを湖に投げ、その犠牲によって風が吹き返してきて、舟が岸へ戻ってくるんですよ!凄いでしょ!
実際にははらわたは見せない。でも、大岩の上に切腹した浪七が伏せると、血糊がダラダラダラーッと流れ落ちます。そして、悪者と斬り合って最後、浪七が死ぬときは、大岩の斜面をさかさまにズリズリと落ちていきます。
小栗判官と浪七は、猿之助が二役でやってる。

私がわりと好きなのは、千僧供養・万僧供養というんでしょうか、お駒(小栗判官と一度は婚約したのに裏切られた娘)のたたりで足萎えになり顔も崩れてしまった小栗を車のついた板に乗せて引いていくシーン。縄でその車を引いて、一日引けば千人の僧を供養したような功徳がある、十日引けば万人の僧を供養した功徳があるという説法があって、それをもとにした哀切なシーンになっているのだが、今回は小栗の乗った車を動かさずに踊りのしぐさで見せてたから、わかりにくかったかもしれない。動かしてもできたんじゃないの?

熊野権現で遊行上人の祈りで奇跡が起きてすっかり治った小栗判官は、奉納額の真っ白い馬をエイヤッと呼び出して、自分と照手姫が乗って、宙乗りで3階の客席まで駆け去っていきます。うしろに乗ってる照手姫の笑也さん、怖くないですか?えらくゆったり座ってるんだけど(笑)。
この遊行上人の弟子たちが祈る場面に寺嶋眞秀クンが出て、大勢の大人を従えてセンターでしっかり踊ってるの、大きくなったねえ!ずっと本名のままで、初舞台のお披露目をしないで出演してるけど、どうするのかな。とてもお芝居が好きなんだろうなと思うけど。

大詰めは敵役(猿弥さん)と小栗の味方が勢ぞろいして見得をしてるところへ、大量の雪(紙だけど、かたまりだったよ!)がどさっと落ちてきて、わあっ!
派手な演出、ジェットコースター・ストーリー、楽しく観ました。
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