よむよま

よむ・よまない、それから。

黒船以降

2010-08-04 22:07:56 | 読む
山内昌之・中村彰彦「黒船以降」中央公論新社
読みやすくおもしろい本だった。
冷静、公平な研究、分析じゃないです、二人で好き勝手言ってます。
それは最初から断って話してる。

水戸藩と徳川斉昭の斬り方なんてすごいです、暗殺されそうです。
私は斉昭って「困ったちゃん」だったんでしょ、というぐらいにしか知らなかったが、
困ったちゃんどころの段じゃないのね。
そもそも水戸光圀がいかん、「大日本史」の編纂がいかんというの。
だいたい、一つの藩にすぎないのに、「大日本史」なるものを勝手に作るとは、
そんな権限も資格もないという。
何より問題なのは、維新の思想的な出発点でありながら、
維新の手柄は薩長に奪われたために、非常な無念と挫折感が残り、
それが水戸学こそ日本民族の精神であるというような美化につながり、
昭和のテロ、ファシズムの支えになっていったことだ、と。

薩摩はほめちぎり、長州には批判的なのもおもしろい。
長州人の「薄情さ」がいやだ、と。
龍馬の功績とかは、案外、いままでの通説のままだったり、
小松帯刀は名前も出なかったり、あら?と思うところもあるけど、
厳密な歴史書、研究本ではなく、読み物ということですね。

私は中村彰彦氏は、土方びいきで近藤嫌いなのが気に入らない書き手なんだけど、
この本の中で会津の容保公のことを、
陰謀渦巻く京都で、「策を弄すな」と言うなど、政治家には向かない、
「このへんが容保の限界ですね」と言っている。
中村氏は近藤のことも、そのいわば素朴な単純さを「限界」と言っていたから、
有能な政治家(つまりずる賢い)の資質でない人は好きじゃないのかも。

今日の歩数計:7,342歩
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする