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「秀吉はいつ知ったか」 山田風太郎

2016年02月07日 | 本(エッセイ)
やっぱり面白い。信長・光秀・秀吉。

秀吉はいつ知ったか (ちくま文庫)
山田 風太郎
筑摩書房


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中国大返しに潜む秀吉の情報網とその裏にあっただろう権謀を推理する「秀吉はいつ知ったか」。
福澤諭吉と榎本武揚の心理とそのすれ違いを考察する「その後の叛将・榎本武揚」。
歴史的人物の評価の移りかわりや役割の大きさについて思いをはせる「大楠公とヒトラー」
―天才伝奇小説家山田風太郎の発想がかいまみえる「歴史」をテーマにした文章を中心に編まれるエッセイ集。


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山田風太郎先生のエッセイ集。
…なんだか著者のことは「先生」と呼ぶのが一番ピッタリする気がします。
本著には先生の身の回りのことや歴史のこと、様々なエッセイが収められていますが、
やはり読み応えがあるのはこの「秀吉はいつ知ったか」をはじめとする
歴史上の人物考察のところ。


「秀吉はいつ知ったか」、これはもちろん「信長の死」のことですね。
今考えても、毛利攻めにあたっていた秀吉が信長の死を知り、
即座に戦にケリを付けて京へ駆け上り、光秀を討つ
という行動が、迅速すぎるというのです。
秀吉は信長の死を一体いつどのように知ったのか?
・・・ネタばらしをしてはダメかな?と思いつつ、
まあ、本書には他にも興味深い話が満載なので明かしてしまいましよう。
風太郎先生の見る秀吉は相当に「腹黒い奴」で、
そもそも光秀の謀反をそそのかしたのが秀吉。
だから彼は本能寺の変を予期していた。
だからこそ、「その時」にはもうシナリオができていて、
即座に行動できたのだ・・・と。
こういう陰謀を巡らせる秀吉像は、「信長協奏曲」中の秀吉像に近いですね。


「天狗党始末」ではあの「恋歌」でも読んだ
水戸の天狗党にまつわる悲惨な事件のことに触れています。
戦国時代も興味深いですが、幕末もまた色々なドラマ満載です。


ラストの「安土城」では、信長に反旗を翻した光秀の心情を小説風に仕立てています。
光秀は、信長が彼の意に反した人々への残酷な処分を目の当たりにし、
恐怖を感じるのです。
命を奪うことはあたり前。
時には当人のみならず一族のプライドも生きる意欲も根こそぎにしてしまう。
そんな時に、信長から家康のもてなしの準備を言い渡された光秀が、大失敗。
まずい・・・、このままでは自分もどんな罰を受けるかわからない・・・
非常な恐怖を感じた光秀が・・・
ということなんですね。
全ては、どこまで行っても想像の域をでないのですが、
それがまた歴史の面白いところ。
楽しめる一冊です。

「秀吉はいつ知ったか」 山田風太郎 ちくま文庫
満足度★★★★☆


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