映画と本の『たんぽぽ館』

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「スクリーンが待っている」西川美和

2024年06月10日 | 本(エッセイ)

映画作りの実際

 

 

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シカゴ国際映画祭観客賞・最優秀演技賞〈役所広司〉ほか、
国内外の映画賞で高く評価された『すばらしき世界』は、
佐木隆三によるノンフィクション・ノベル『身分帳』を原案に、
西川美和監督が初めて原作ものの映画化に挑んだ作品だ。

本書は、原案小説との出会いから、取材と脚本の執筆、撮影から編集など、
五年にわたる制作の日々を、監督自ら赤裸々に綴るエッセイ集である。

原案小説との出会い、公的機関による婚活パーティーへの潜入、
長く仕事をともにしたスタッフとの別れ、刑務所での対話、
『身分帳』のモデルとなった人物の足跡を辿る旅、スタッフが集う撮影前の緊張感、
コロナによる編集作業の中断、出演者への思い──
一本の映画の企画が立ち上がり、それが完成するまでの過程が監督の思いとともに仔細に描かれ、
映画業界を目指す人や映画ファンはもちろん、多くの人に読まれるべき一冊だ。

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西川美和監督作品「素晴らしき世界」制作にまつわるエッセイです。

 

役所広司さん主演の本作は2021年に公開されていて、私も見ています。
佐木隆三さんによるノンフィクション・ノベル『身分帳』を原案にしていて、
殺人罪の服役を終えた男が出所後、懸命に社会復帰を図ろうとする物語。
原案小説の出会いから公開まではほぼ5年。
その間、コロナ禍に突入して編集作業の中断もあったそうで・・・。
映画作りの様々な局面それぞれのご苦労がにじみ出ています。

 

中でも人との関わりの部分が、とても切実で身に迫る感じがします。
例えば、以前の撮影で一緒だったスタッフを
今回呼ばずに別の人にする、などというときの心苦しさとか。

 

役所広司さんは、西川監督が以前から敬愛する役者さんで、
自分などの作品に本当に出演してもらえるのか?と思ったり、
初めて会うときには大いに緊張し、
台本の一字一句を大事にする役所さんの反応にも緊張し・・・。
すでに名監督との地位を得ている西川監督にしてもこうなんだなあ・・・と
逆に親しみを感じてしまったりして。

そしてまた監督は、仲野太賀さんが妙に気に入ってしまって、
さほどの用でもないのに呼びつけて来てもらったりした
などと言うのにはニンマリ。
なんかそういう気持ち分るなあ。
独特の柔らかい場の雰囲気を作る方ですよねえ・・・。

 

私には実においしい一冊でした。

 

「スクリーンが待っている」西川美和 小学館文庫

満足度★★★★★



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