映画と本の『たんぽぽ館』

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「さいはての彼女」 原田マハ 

2013年09月15日 | 本(その他)
自分で引いた“線”を越えよう

さいはての彼女 (角川文庫)
原田 マハ
角川書店(角川グループパブリッシング)


* * * * * * * * * *

25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。
猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、
絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。
失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、
沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!?だが、
予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。
人は何度でも立ち上がれる。
再生をテーマにした、珠玉の短篇集。


* * * * * * * * * *


この本を通してのテーマは旅。
都会の生活につかれた女が、
一人旅をして、自分を取り戻す・・・という、
まあ、ちょっと類型的な話かなあ・・・と、
面白くはあったのですが、思ってしまったのです。
でも最後の作品でちょっと「おっ」と思いました。


冒頭の一作「さいはての彼女」が、先の紹介文にある内容です。
北海道・女満別に降り立って、
涼香がであったのは、一人の女の子。
ハーレーダビッドソンにまたがり、ツーリングをしている
とびきり明るく元気でイキイキとした女の子です。
彼女のお陰で涼香は救われることになるのですが・・・。


ラストの「風を止めないで」は、この話の裏の物語といっていいでしょう。
娘を送り出して帰りを待っている母親。
そこでこの少女ナギの詳しい生い立ちも語られます。
実はナギには耳が聞こえないという障がいがあるのです。
子供の時、ナギは父親に言って泣きました。

耳の聞こえる人と、自分との間に見えない「線」がある、
と。

けれど父親は言います。
そんな「線」は、どこにもない。
もしあるとすれば、それは耳が聞こえる人が引いた「線」ではなくて、
おまえが勝手に引いた「線」なのだと。
いい言葉です。
でも世間では確かに、耳が聞こえる人が線を引いてしまっているのではないかな。
障害のある人に対して、線を引いてしまっているのは
たいていは健常者のほうだ・・・。
と、ちょっと苦い気持ちになりました。


けれどこの本の解説で吉田伸子さんが言っています。

「結婚しているとかしていないとか、
子供がいるとかいないとか、
仕事がどうとか家庭がどうとか、
そんなのはみんな自分が勝手に引いた「線」なのだ。
軽やかに越えていこうよ。越えられるよ。」


あ、なるほど、著者が言いたかったのはそっちのほうだったか、
と、納得した次第。


主婦でオバサンだけど・・そんなことにとらわれないで、
思い切ってやりたいことをすればいい。
そういうことでした!!

「さいはての彼女」原田マハ 角川文庫
満足度★★★☆☆


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