誰もが飲み込まれる可能性のある闇
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精神的に不安定な状況を描き出す作品。
見るのがちょっとつらいです。
作家ジュリー・デイヴィス(アマンダ・セイフライド)は、
子供向けの絵本を専門にしていて、ベストセラーの常連となっています。
夫イーサンと1歳の娘との生活も順調。
公私ともに順風満帆。
端からはとても幸福そうに見えます。
しかし、彼女の中には自分でも抑えられない不安が渦巻いています。
夫もそのことは気にしていて、いつも彼女の顔色をうかがっているようでもあります。
ジュリーは薬を用いながらなんとか過ごしていたのですが、
第二子の妊娠、出産からまた心は落ち込んでいきます・・・。
いわゆる産後鬱の状態を描いていると思われます。
そして作中では根源にジュリーの子どもの頃の忌むべき出来事の記憶がある・・・
というように描かれています。
けれど多分、ジュリーはそのことが自分を苦しめているとは自覚していない。
それは無意識の底から、じわじわとジュリーを犯していく・・・。
こんなに可愛い子供がいて、優しい夫もいて、
時には母が育児を手伝いに来てくれて、好きな仕事もあって。
人がうらやむような好条件の元にいながら、
それでもジュリーは孤独で不安に押しつぶされそうになり、
元気なフリをして、やがて自滅していく・・・。
ジュリーは妊娠期、そして授乳期、子供に薬の影響を与えたくなくて、
自らの抗うつ剤を飲むことをやめてしまっていたのでした・・・。
本作を見る限り、それはもうどうしようもないのだ、
彼女を救う手立てなどないといってるようでもあり、
こちらもまで苦しくなってしまいます。
まずは、人はこのような状況に置かれることがある、ということだけでも知ろう。
そういう狙いなのかも知れません。
どう見ても幸せそうに見える人の中にもある闇。
そういうときに、どうすればその人によりそうことができるのか、
それはケースバイケースで、多分その都度、
死ぬほど考えなければならないことでもあるのでしょう。
ジュリーの描く夢いっぱいの絵本に対しての彼女の胸の内。
・・・つまりは純粋すぎたのかもしれませんが、切ないです。
<Amazon prime videoにて>
「星の消えた空に」
2021年/アメリカ/105分
監督・脚本:エイミー・コッペルマン
出演:アマンダ・セイフライド、フィン・ウィットロック、ジェニファー・カーペンター、
マイケル・ガストン、エイミー・アービング、ポール・ジアマッティ
心の変調度★★★★★
満足度★★★☆☆
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