映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「南鳥島特別航路」 池澤夏樹 

2024年07月29日 | 本(エッセイ)

観光地ではない場所への旅

 

 

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池澤夏樹さんの、「旅」の本です。
ただし行く先は、観光地を観光するというのではなくて、
「自然よりでしかも体力だけで踏破するのではない旅行」。
火山、鍾乳洞、大潮、豪雪・・・など、
自然地理にかかわるテーマを選び、まるで地学の授業でもあるかのような・・・、
そんな旅。
「ブラタモリ」のような感じ、といえばイメージしやすいかも知れません。

そんなことで、本巻での旅先は・・・

★五島列島のミニ火山群

★内間木洞の暗黒体験

★白峰、炉端で聞く豪雪の話

★八重干瀬、気宇壮大な潮干狩り

★立山砂防百年の計

★サハリン、北緯47度白樺林

★乗鞍岳に降る宇宙線

★白神のブナと秋田の杉

★南鳥島特別航路

★雨竜沼、湿原の五千年

★対馬、大陸へつながる海の道

★八重山諸島、マングローブの豊穣

 

実は本巻、1991年に出たもの。
(私が読んだのは、文庫ではなくて単行本の方。)
これが「観光地」の本であればその内容はもうほとんど役に立たないと思われるのですが、
上記で見て分るように、そう簡単には状況は変わらないものが多い。
おそらく、今行ってもあまり変わらないままなのではないかと・・・。

そういう意味では、地球の変遷というごく長いスパンの視点を持って描かれていると言ってもいい。

 

中でも、表題にもなっている南鳥島は、
日本最東端、東京から南東に1900キロの彼方にある無人島。
無人島とはいえ、気象庁と自衛隊、アメリカの沿岸警備隊の人々が
50人ほど駐屯しているという島。
住民がいないので民間の飛行機も船の便もなく、
著者はなんとか貨物船に乗せてもらって行ったとのこと。
その成り立ちも興味深い・・・。

こんな旅にもちょっと憧れます。

 

図書館蔵書にて

「南鳥島特別航路」 池澤夏樹 新潮文庫

満足度★★★★☆



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