映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

声をかくす人

2012年11月20日 | 映画(か行)
正義とは。平等とは。



            * * * * * * * * *


なぜか今年は米大統領リンカーンに関係する映画が多いような気がします。
今作は、リンカーン大統領暗殺の罪に問われ、
アメリカ合衆国政府により処刑されたはじめての女性、メアリー・サラットを描いています。



南北戦争終結直後1865年。
16代米大統領エイブラハム・リンカーンが暗殺されました。
犯人グループはすぐに捕らえられましたが、
その犯人一味にアジトを提供したという理由で、
下宿屋を営む南部出身のメアリー・サラットが逮捕されたのです。
その弁護を引き受けることになったのが、フレデリック・エイキン。
彼も始めは一般の人々と同じく、大統領暗殺の犯人一味に対し、怒りと復讐に満ちた感情を持っていたのですが、
メアリーと対峙するうちにその無実を信じるようになっていきます。
そもそもがこの裁判、
メアリーは民間人であるにもかかわらず、軍事法廷で行われたのですね。
はじめから不利な裁判で、処刑ありき。そう決められていたも同然の裁判なのでした。
原題の“The Conspirator”は、共謀者。
つまり、リンカーンの死に対してのスケープゴートの一人として彼女も数えられていたのでしょう。



こんな中で、フレデリック・エイキンはよく戦いました。
法のもとでの正義とは。平等とは。
・・・弁護士としてどんどん目覚めていきます。
しかしまあ、結果は歴史が示す通り。
けれど、彼が上げた声はムダではなく、その後に生かされていくことになる。



さすがロバート・レッドフォード監督。
骨太に決まりました。
メアリー・サラットはロビン・ライト。
取り乱さず、悲嘆にくれず、強い魂を感じます。
これはアレですね。
先日読んだ「蜩ノ記」の戸田秋谷。
近くに迫る死を見つめながらも自分を見失わず、
なお背筋を正して生きている。
メアリー・サラットの場合、彼女を支えているのは宗教ということになりますが。
見応えのある作品でした。

2011年/アメリカ/122分
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ジェームズ・マカボイ、ロビン・ライト、ケビン・クライン、トム・ウィルキンソン、エバン・レイチェルウッド