映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ツナグ」 辻村深月

2012年11月05日 | 本(その他)
亡くなった人との対面を叶える人

ツナグ (新潮文庫)
辻村 深月
新潮社


                 * * * * * * * * * 

「使者(ツナグ)」とは・・・
一生に一度だけ、使者との再会を叶えてくれるという人物。
死者との再会を願う様々な人々のストーリー。
先ごろ直木賞を受賞した辻村深月作品にして、
映画化され現在(2012年10月)劇場公開中の作品です。


ミステリ好きの私にして、実はまだ読んだことのない作家。
まだまだミステリ世界は広いのだなあ・・・と思い知らされるところですが、
これを機会にまた色々読んでみたいと思います。
今作はミステリと言うよりはファンタジーというべきかと思いますが・・・


まずは、
突然死したアイドルが心の支えだったOL
年老いた母にガンの告知をできなかった息子
親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生・・・
という風に「ツナグ」例が語られていきます。
どれもつながりは特にないのですが、
「ツナグ」役はみな意外にも高校生くらいのぶっきらぼうな男子。
このあたりまでは特別面白みも感じないでいたのですが、
更に読み進むうちに「ツナグ」役の男の子自身の話に移り、
やにわに興味がそそられてきます。
いったい「ツナグ」とは何なのか。
このような力はどこから来たものなのか。


さて、自分なら、誰と会うことを願うでしょうか。
ここで大事なのは、この対面が叶うのはたった一人だけ、ということなのです。
一度体験してしまうと、自分が生きているうちはもう、他の人と会うことはできません。
幸いにというべきでしょうけれど、
私はまだごく近しい人を亡くしてはいないので、特にそういう人はいないのです。
でも例えば、予期せず震災などで亡くなった方の遺族ならば、
どんなにかこんな風に故人とあってみたいでしょうね・・・。
本当にいるといいですね。
ツナグさんが。

うーん、けれども今作は、
読んでしまったら、映画でもぜひ、とまでは思わないです・・・。

「ツナグ」辻村深月 新潮文庫
満足度★★★☆☆