映画と本の『たんぽぽ館』

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「美女と竹林」 森見登美彦

2011年01月17日 | 本(エッセイ)
竹林で妄想すること

美女と竹林 (光文社文庫)
森見 登美彦
光文社


           * * * * * * * *

森見登美彦氏のエッセイ集です。
といいますか、これは「小説宝石」に連載されたものなのですが、
始めに「美女と竹林」という題をつけてしまって、
その後そうとう苦しんだあとが見られます。
そのような著者の日常をかいま見ることが出来るのも、
ちょっとしたお楽しみではあります。


そもそも著者の学生時代の研究が「竹」であったようなんですね。
京都大学大学院農学研究科出身! 
それ以前に、とにかくまず著者は「竹林」が好きなのです。

さて、竹林。
北海道には竹林がありません。
以前に京都へ行って見たような気がするくらい・・・。
こちらにあるのは、ネマガリダケという笹の親分みたいなので、
林というよりは藪ですね。
だからどうも竹林のイメージはあるものの、実感がありません。
著者がそこまで固執する竹林の魅力とは何か・・・? 
今度旅行するときには是非竹林も訪れてみることにしましょう。


さて、この本では、著者が知り合いの方の所有する竹林の手入れを申し出たんですね。
竹林というのは手入れしないと生い茂り、大変なことになるという・・・。
しかし、そのうっそうとした竹林にたった一人で入るのは、あまりにもさみしい。
そこで友人を誘って、のこぎりを持ち、
颯爽と竹林に足を踏み入れるのだけれど・・・
竹は堅くて思うように切れず、刃が挟まってニッチもサッチも行かなくなることしばし。
ようやく切れても、上の方で枝が絡まり合って、倒れても来ない。
悪戦苦闘。
ようやく少し手をつけました・・・という程度でその日一日は終わったのですが、
その後、今度は手入れに向かう日程が取れない。
著者は、普通にサラリーマンを続けながら文筆活動をしているんですね。
なので自由になるのは終末の休日だけ。
それもちょうど「夜は短し歩けよ乙女」などの出版で人気急上昇の忙しい時期。
気持ちだけは「行かねば!」と思うのだけれど、
行けないままに日が過ぎていく・・・
そういう焦りの中で、でも、著者はいずれカリスマ竹林経営者として、
TIME誌の表紙を飾る日を妄想している・・・。
MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)を設営し、
経費でセグウェイを買って、
琵琶湖を一周しよう・・・などなど。

これらの妄想力こそが著者のストーリーの源流なんだなあ、
と妙に納得してしまいました。
孟宗竹ならぬ、妄想竹・・・。
お後はよろしいようで~。

満足度★★★☆☆