映画と本の『たんぽぽ館』

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「舞姫/テレプシコーラ 第2部 5」 山岸凉子

2011年01月14日 | コミックス
彼女の本当の才能は・・・

舞姫(テレプシコーラ) 第2部 5 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
山岸 凉子
メディアファクトリー


           * * * * * * * *

「舞姫/テレプシコーラ」第2部の完結編!
考えてみると第2部は、すべてローザンヌ・コンクールの出来事でした。
六花(ゆき)ちゃんの集大成だったんですね。
しかし、前巻は六花ちゃんにはとても気の毒な展開でした。
体調を崩した彼女は、準決勝の途中で棄権をせざるを得なくなってしまう。
また、途中棄権なのでオファー(バレエ学校・バレエ団からの留学や研修の打診)の権利もないと言われ・・・。


私は思わず著者に「鬼・・・!」とつぶやいていましたね。
しかし、なんということでしょう!!
きちんと彼女の個性とがんばりが認められることに。
これから読む方のために、あまり詳しく書くのは止めておきますが、さすが完結編。
そこには第1部の顛末がきちんと生きており、
地道にバレエを続けていた六花ちゃんが報われるのです。
しかし、この子の本当の才能はバレエよりも、
限りないそのお人好しさにあるのではないかと思ったりします。
自分のことでも精一杯なのに、彼女はきちんと人の心配までして、お節介を焼いてしまう。
それであのローラ・チャンもわずかに心を開きます。
それにしても、やっぱりローラ・チャンは空美ちゃんのようですね。
結局作品中ではきっぱりとした答えは出ていないのですが、これはもう間違いない。
しかし、何がどうなってあの子がこのようになったのか・・・?! 
この物語だけでもう何冊か本が書けそうじゃありませんか。
ま、それはないでしょうけど。

このストーリーは姉の千花ちゃんが亡くなった件ではとてもショックでしたが、
まさしく現代のバレエ事情を語ってくれる作品でした。
私自身はバレエのことなど何も解っておらず、
作中のバレエ用語も意味不明のところを読み飛ばすようないい加減な読者ではありましたが、
それでも、とても興味深く読めました。
まずは満足、満足。
が、やはり「アラベスク」には及びませんけれど・・・。
うーん、でも、本当はこの先の六花ちゃんの活躍をもっと見たかった・・・。

満足度★★★★☆